2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒト及びサルiPS細胞を用いた腸管毒性試験用モデルの構築と毒性バイオマーカー探索
Project/Area Number |
16K15164
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
松永 民秀 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (40209581)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ヒトiPS細胞 / サルiPS細胞 / 腸管上皮細胞 / 腸管オルガノイド / 低分子化合物 / 分化誘導 / 毒性試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒトiPS細胞から毒性試験に利用可能なより機能的な腸管上皮細胞を効率的に分化誘導する方法を確立する。また、ヒトiPS細胞より腸管オルガノイドを作製、クリプトや絨毛など腸管の組織学的構造及び特徴的な機能解析、並びに毒性試験を行うことを目的とした。 ヒトiPS細胞は、国立成育医療研究センターの梅澤博士からご供与頂いた。サルiPS細胞は、申請者らがカニクイザルの線維芽細胞より樹立した。 ヒト及びカニクイザルiPS細胞から腸管上皮細胞及び腸管オルガノイドへの分化誘導の際に添加する低分子化合物の影響について調べた。その結果、腸管関連遺伝子や腸管の主要な薬物代謝酵素であるCYP3A等、様々な薬物動態関連遺伝子のmRNA発現量が増加した。さらに、腸管オルガノイドについては、別の低分子化合物の添加により最終的にコントロール群に比べ薬物動態関連遺伝子のmRNA発現が、数十倍から数千倍に上昇した。一方、腸管を構成している細胞マーカー類もコントロール群に比べ、同程度もしくはそれ以上のmRNA発現を示した。この結果は、細胞の分化効率よりも機能の向上によることが示唆された。ヒト及びカニクイザル腸管オルガノイドについて形態学的観察を行った。その結果、腸管オルガノイドは球状の形体であり、透過型電子顕微鏡の観察から内側に腸管刷子縁膜側に存在する微絨毛及びタイトジャンクションの形成が確認された。さらに、HE染色やアルシアンブルー染色の結果から、腸管オルガノイドは分泌細胞を含む複数の細胞集団であることが示唆された。また、iPS細胞由来腸管上皮細胞に極性が認められた。腸管オルガノイドに抗がん剤5-FUを添加すると、細胞生存率(WST-8アッセイ)及びvillinやLGR5など腸管マーカー遺伝子のmRNA発現が濃度依存的に低下した。 今後、アポトーシスや炎症性サイトカインに関して検討を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト及びカニクイザルiPS細胞から腸管上皮細胞及び腸管オルガノイドへの分化促進に有用である低分子化合物を新たに見出すことができた。また、iPS細胞由来腸管上皮細胞及び腸管オルガノイドの形態学的特性及び薬物動態関連遺伝子の発現解析も行った。iPS細胞の腸管上皮細胞への分化誘導法についてはPTC出願を行った。また、腸管オルガノイドの作製については国内特許出願を予定している。今後、腸管毒性が報告されている抗がん剤などを用いて、毒性試験に利用可能か検討を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒト及びカニクイザルiPS細胞から低分子化合物を用いてマーカー等が高発現する腸管上皮細胞及び腸管オルガノイドを作製する方法を見出すことができたことから、今後作製したiPS細胞由来腸管上皮細胞及び腸管オルガノイドの薬物動態試験を含む機能及び毒性学的評価が可能か明らかにする。すなわち、タイトジャンクションやトランスポータの機能評価をFITC-dextran 4000の透過実験や特異的な基質薬物を用いて解析する。また、小腸に発現する主要な薬物代謝酵素や薬物トランスポーターの基質薬物を用いて、その代謝活性や輸送活性の評価を行う。オルガノイドの構造解析については、組織染色及び免疫染色し光学顕微鏡観察を行う。 毒性試験については、抗がん剤など腸管毒性を示すことが知られている医薬品について免疫蛍光染色、形態学的解析、細胞逸脱酵素の解析を行う。毒性バイオマーカーの検索は、LGR-5、EGF、TGF-α、Dll4、WNT-3など、幹細胞維持に必須な因子を候補とし、それらの発現変動を解析、細胞毒性と比較する。また、抗がん剤輸送単体の特異的阻害剤を添加することで、細胞毒性及び遺伝子発現がどのように変動するか解析を行う。 医薬品の開発では、吸収増加や毒性の軽減のためにエステル化合物などを負荷したプロドラッグが用いられる場合がある。そこで、腸管エステラーゼの発現や機能についても解析を行う。さらに、カニクイザルiPS細胞由来腸管上皮細胞及び腸管オルガノイドのヒトとの種差を明らかにする。 ヒト腸管キメラ動物の作製については、ヒトiPS細胞由来腸管細胞あるいはオルガノイドをSCIDマウス等の免疫不全マウスの結腸部あるいは小腸下部(回盲部)に移植する。移植後、一定期間ごとに解剖し、免疫染色等の解析を行い、生着率を検討する。
|
Research Products
(13 results)