2017 Fiscal Year Research-status Report
小腸絨毛上皮モデルを用いた革新的in vitro薬物吸収性予測システムの開発
Project/Area Number |
16K15165
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
白坂 善之 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (60453833)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 薬学 / 薬物動態学 / 経口吸収 / 消化管 / 代謝酵素 / トランスポーター / 培養細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、医薬品開発の効率化を目的として適用されている評価系は、いずれも実際の小腸における絨毛上皮構造や生理環境の影響を簡略化し、迅速性と簡便性を優先させた単純なシステムとして確立されているため、高精度な薬物吸収性予測を行うことは困難なのが現状である。そこで本研究では、高精度な薬物吸収予測を可能にするin vitro小腸絨毛上皮モデルを構築することを目指し、本年度においては、モデル細胞の妥当性、培養デバイスの作成、培養法の構築に関する詳細な検討を行った。 灌流培養法を確立するにあたっては、その後のin vitro薬物吸収性予測システムの構築を考慮した上で、特殊な培養デバイスを作製する必要があった。そこで昨年度、回転子を利用した予備検討を行ったところ、回転動作に伴う過剰な加温により、培地に想定外の熱が加わり、適切な細胞培養環境を得ることが困難であることが明らかとなった。そこで、今回、計画当初より目指していた灌流培養法を直接試みることにした。すなわち、従来型のTranswellシステムのbasal側に流路を作製し、培養液を灌流することで、モデル細胞の物理的刺激環境下での培養を試みた。本検討に用いるモデル細胞としては、最も汎用性の高いヒト大腸がん由来のCaco-2細胞を選定した。21日間培養の可能性と培養環境の妥当性を検証するために、膜抵抗(TEER)に基づくタイトジャンクション(細胞間隙)形成の評価・検討を行ったところ、灌流培養法におけるCaco-2細胞のTEERは、培養期間に伴い高値となり、十分なタイトジャンクション形成が観察された。一方、興味深いことに、通常の培養法に比べて顕著に高いTEERを示したことから、灌流培養法により細胞の形態が変化している可能性が推察された。 以上、本年度の検討では、適切な培養環境を提供できるデバイスの作製とそれを用いた灌流培養法を提唱することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、回転子を利用した予備検討を行ったところ、回転動作に伴う過剰な加温により、培地に想定外の熱が加わり、適切な細胞培養環境が得られないことが明らかとなった。そこで、今年度に入り、別の手法を幾度か試みたものの、少なくとも回転子を用いた手法における問題点を改善することはできなかった。 そこで次に、計画当初より目指していた灌流培養法を直接試みることにした。すなわち、従来型のTranswell Insert (12 well)システムのbasal側に血管を模倣した流路を作製し、培養液を灌流することで、モデル細胞の物理的刺激環境下での培養を試みた。ここまでの検討で、多くの時間を費やしてしまったため、進捗状況としては遅れをとってしまっているのが現状である。しかし、灌流培養法およびそのデバイス作成にあたっては、細胞への物理的刺激の影響を考察することが評価の根幹となるため、引き続き慎重に行っていく必要性を考えている。ただし、現状としては、本デバイスによる細胞培養が可能である見込みが得られたため、今後は、本デバイスおよび灌流培養により培養したCaco-2細胞について、タイトジャンクション形成、種々機能性タンパク質の発現、さらには細胞形態の変化などを、随時、詳細に検討・観察・考察していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、主に灌流培養法ならびにそのデバイスの作製を試みてきた。結果として、システムとしての妥当性と将来的な可能性が得られつつあるものの、灌流培養法およびそのデバイス作成については、細胞への物理的刺激の影響を考察するための重要課題、すなわち本研究の根幹となる検討課題であるため、引き続き慎重に行っていく必要性を考えている。したがって、平成30年度についても、29年度と同様に、灌流培養法およびそのデバイス作成の妥当性の検証を目的とした詳細な検討 (細胞に物理的刺激を与えるための工夫と考察)を行う予定である。 一方、これまでの検討から、本デバイスと灌流培養によりある程度の細胞培養の見込みが得られたことから、今後は、本デバイスおよび灌流培養により培養したCaco-2細胞について、タイトジャンクション形成、種々機能性タンパク質の発現、さらには細胞形態の変化などを、随時、詳細に検討・観察・考察していく予定である。 また、Caco-2細胞以外のバックアップモデル細胞 (平成28年度に見出したCYP3A4発現細胞など)に関する検討についても、並行して進める予定であり、必要性や重要度に応じて、① Real-time quantitative PCR法によるmRNA発現の相対定量、② Western blotting法によるタンパク質発現の相対定量、③ LC-MS/MSによるタンパク質発現の絶対定量、④ 免疫組織化学染色法によるタンパク質の発現局在、⑤ 基質薬物などを用いた活性評価などを介して、Caco-2細胞との比較を行う予定である。
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