2016 Fiscal Year Research-status Report
発光性イリジウム錯体を用いた生体内アミノ酸DL変換のその場追跡
Project/Area Number |
16K15175
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
佐藤 二美 東邦大学, 医学部, 教授 (60205961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 久子 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20500359)
山岸 晧彦 東邦大学, 医学部, 非常勤研究生 (70001865)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アミノ酸DL変換 / キラルセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ペプチド鎖中のアミノ酸の配列と絶対配置を同時に認識できるキラルプローブを開発する。具体的には、特定のアミノ酸配列を認識する部位(抗体)とそれに隣接した目標アミノ酸の絶対配置を識別する部位(ペプチド側鎖)との両方を付与したシクロメタレート型イリジウム錯体(Ⅲ)を合成する。この錯体は水溶液中ではほとんど発光せず、目標アミノ酸がD体である場合に限って発光する。このプローブの特性を生かして、まず加齢との関係が注目されている眼球水晶体中のタンパク質におけるアスパラギン酸のDL比を解析する。さらに、未だD-アミノ酸の存在が報告されていない神経細胞に対して、D体を含むタンパク質の探索を行う。本研究は申請者らが行ってきた発光性錯体によるキラルセンシングを生体系へ発展させたものである。本年度は、キラルなイリジウム錯体を合成し、エネルギーを受け取る相手としてアミノ酸分子を選び、イリジウム錯体からのエネルギー移動やエナンチオ選択性が起こるかどうかを検討した。アミノ酸と相互作用する可能性のあるキラルなペプチド基を付与したイリジウム錯体を新たに2種類合成した。これらの光学分割よりキラルなでデルタ体、ラムダ体のイリジウム錯体を得た。このようにこの錯体は中心金属まわりの配位異性と配位子の不斉炭素の2つのキラリティを有している。発光性のキラルイリジウム錯体と種々のアミノ酸分子に対して、イリジウム錯体からアミノ酸へのエネルギー移動について検討した。その結果、イリジウム錯体をアミノ酸としてトリプトファンメチルエステルを用いたときに高い効率の発光消光が見られた。次に消光効果におけるこの錯体のジアステレオマーよりエナンチオ選択性を検討した。その結果、アミノ基に消光作用のあるジニトロベンゾイル基をつけた誘導体であるアラニンエチルエステルにおいてエナンチオ選択性が得られることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、キラルなイリジウム錯体を合成し、エネルギーを受け取る相手としてアミノ酸分子を選び、イリジウム(III) 錯体からのエネルギー移動やエナンチオ選択性が起こるかどうかを検討し、論文化した。一報はChem.Lett. のEditor's Choiceに選ばれた。
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Strategy for Future Research Activity |
モデルペプチド中のD-アミノ酸の検出のために、上記2つキラル部位をもつイリジウム錯体を用いて、D体、L体の選択性を調べる。さらに、細胞中の遊離アミノ酸に対して前年度に合成したキラルイリジウム(III)錯体による発光消光を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度の基礎データをもとに次年度には実際の細胞を用いて検討をおこなう。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
モデルペプチド中のD-アミノ酸の検出のために、上記2つキラル部位をもつイリジウム錯体を用いて、D体、L体の選択性を調べる。 細胞中の遊離アミノ酸に上記キラルイリジウム錯体による発光、消光を検討する。
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