2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K15189
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
橋本 美穂 (サトウミホ) 群馬大学, 大学院保健学研究科, 研究員 (90381087)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | hypothermia / LPS / SIRPα |
Outline of Annual Research Achievements |
生体は免疫系に連動した体温調節機構を有し、これにより発熱だけでなく冷却機構も制御されている。膜型分子SIRPαを全身性に欠損したマウス(SIRPα KOマウス)がLPS投与による全身性炎症モデルに対して強い低体温応答を示すことから、本研究ではその低体温易誘導性の原因を探る。まずこの低体温が能動的な生体反応かどうかを検討するために、LPS投与後のマウスの呼吸代謝を測定したところ、SIRPαKOマウスでは野生型マウスと比較して酸素消費量、二酸化炭素の排出量およびエネルギー消費量が顕著に減少し、呼吸商が7付近を示した。つまり、LPS投与により低体温が誘導されている時には脂肪をエネルギー源とする能動的な低代謝が誘導されていることが推察された。また、LPS投与後のサイトカイン遺伝子の発現変化を調べたところ、SIRPαKOマウスでは視床下部の炎症性サイトカインの発現がより強く誘導されており、一方肝臓では野生型マウスと比較してサイトカイン発現量は低値を示した。また、プロスタグランジン合成に関与する酵素の発現量についても調べたところ、視床下部においてはSIRPαKOマウスと野生型マウスとの間に有意差は示されなかった。さらに細胞特異的コンディショナルKOマウスを使った解析では、樹状細胞特異的コンディショナルKOマウスにおいて、SIRPαKOマウスと同様に顕著な低体温が誘導された。以上の結果よりSIRPαKOマウスにおいてはLPS投与後の低体温時に強く低代謝が誘導されており、またその低体温易誘導性に中枢の樹状細胞のSIRPαの欠損が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの結果より、SIRPαKOマウスではLPS投与後に低代謝・低体温が誘導され、末梢のサイトカインの発現が抑えられていることから、この反応は過度の炎症反応を抑制する能動的な生体反応である可能性が示された。また、その低体温誘導に樹状細胞が関与するという予想外の新しい結果が得られたため、研究の進捗状況はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
中枢の樹状細胞は髄膜や脈絡叢に存在する。そこで、これらの部位についてSIRPαKOマウスやコンディショナルKOマウスを使ってさらに解析を進め、樹状細胞のSIRPα分子が関与するLPS投与による低体温誘導メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
SIRPαKOマウスのLPS投与よる低体温易誘導性に樹状細胞が関与するという新たな発見があったため、追加実験を行う必要が生じた。残りの助成金は、テレメトリーシステムの維持・管理費や追加実験のための試薬購入費、学会発表の旅費、人件費等に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)