2017 Fiscal Year Research-status Report
皮膚創傷治癒促進作用を有する環状ペプチドの作用機序解明とその応用
Project/Area Number |
16K15203
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
乾 誠 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70223237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 健 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30457311)
酒井 大樹 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40464367)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 天然環状ペプチド / 創傷治癒促進作用 / 血管誘導作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
環状ペプチSEK-1005は、皮膚創傷治癒促進能、血管誘導能、抗菌作用、免疫抑制作用などを有し、創傷治癒促進薬、脳動脈瘤治療、1型糖尿病の皮下膵島移植などへの臨床応用が想定されている。しかし、その分子メカニズムは全く分かっていない。本研究では、皮膚創傷治癒に関わる表皮細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞でシグナル伝達系を解析すると共に、SEK-1005が直接作用する標的蛋白質を同定し、その作用機序を解明することを目的とする。 SEK-1005からのシグナル伝達系の解析では、血管内皮細胞を用いて血管新生に関与する細胞遊走作用及び管腔形成作用への解析を行った。細胞遊走作用では、単一内皮細胞遊走測定により、SEK-1005が内皮細胞の遊走を促進することを明らかにした。この遊走促進作用では、SEK-1005の下流に内皮細胞からのTGF-betaの分泌、さらにVEGF受容体の活性化があることを明らかにした。また、コラーゲンの3次元培養実験からSEK-1005が内皮細胞の管腔形成に促進的に働くことが分った。この管腔形成促進作用では、SEK-1005の下流でVEGFが主要な役割を果たすことが明らかとなった。 SEK-1005の標的蛋白質同定については、昨年度に引き続きSEK-1005の標識の検討を行った。SEK-1005の標識では、活性を保持した状態で標識可能な部位は一箇所のみである。この際、ビオチンなど小さな官能基では問題ないが、光架橋の官能基など大きなものになると活性を阻害することが明らかとなった。そのためPEGなどのリンカーを介して標識すると、活性を保持することが出来た。これらの標識法を利用して標的蛋白質を架橋し、同定することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SEK-1005からのシグナル伝達系の解析では、血管内皮細胞の遊走促進作用における細胞内での下流のシグナル及び管腔形成におけるシグナル系を明らかにすることが出来た。また、SEK-1005の標的蛋白質同定のためのクロスリンカー挿入方法を確立した。これらの成果により本研究は順調に推移しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
SEK-1005からのシグナル伝達系の解析では、創傷治癒に関与する皮膚表皮細胞、血管内皮細胞に加えて皮膚線維芽細胞形成へのSEK-1005の効果を解明し、細胞内シグナル伝達系の解析を行う。SEK-1005の標的蛋白質同定については、標識したSEK-1005を用いた結合実験からSEK-1005の標的蛋白質への結合様式を明らかにする。さらに光架橋薬を用いた架橋実験を行い、質量分析計を用いてSEK-1005標的蛋白質の同定を行う。
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