2016 Fiscal Year Research-status Report
生体外神経幹細胞ニッチェECMモデルによる神経幹細胞の幹細胞性維持機構の解明
Project/Area Number |
16K15209
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
干場 隆志 山形大学, 有機材料システム研究推進本部, 准教授 (00469769)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 神経幹細胞 / 細胞外マトリックス / 幹細胞ニッチェ / 脱細胞化 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内において神経幹細胞(NSC)は「fractones」と呼ばれる細胞外マトリックス(ECM)に囲まれ、幹細胞性を維持している。しかし、fractonesによる幹細胞性等の機能制御に関する詳細な機構は、fractonesが生体内の微小領域にあり、解析が困難なため明らかにされていない。生体外fractones ECMモデルは、NSCの機能制御におけるfractonesの役割を解析するためのモデルになるとともに、生体外で幹細胞性を維持しながら継代培養するための培養基板となる。そこで、本研究では、神経幹細胞モデルを培養基板上で培養することにより、細胞によって基板上にECMを新たに形成させる。その後、脱細胞化処理を行うことにより、細胞が形成したECMをfractones ECMの生体外モデルとして調製する。調製したfractones ECMの生体外モデル上で幹細胞性の維持ができるか確認後、そのメカニズムを特にFGFシグナルに着目して解析を行う。平成28年度は脱細胞化処理によるECMモデルの調製を行った。 マウス神経幹細胞株MEB5の接着培養を行うための条件の最適化を行った。最適化された条件でラミニン-111塗布基板上で単層培養用培地を用いて培養後、脱細胞化処理を行ったところ、細胞成分の除去を確認できた。また細胞が発現するECM遺伝子を評価したところ、ラミニンα3鎖を含む基底膜の主要成分はすべて発現していた。さらに脱細胞化処理後、ラミニンα3鎖およびフィブロネクチンの免疫染色を行ったところ、脱細胞化マトリックス中にこれらの分子を検出することができたことから、ECMが形成できていることを確認した。 最後に調製した脱細胞化マトリックスがMEB5の接着活性を有するか、細胞接着実験を行ったところ、時間経過とともに細胞は脱細胞化マトリックス上に接着する様子が観察できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、平成28年度中にMEB5が形成した脱細胞化マトリックスを調製し、脱細胞化マトリックス上での幹細胞性を含む細胞機能の評価を行う予定であった。実際に平成28年度中に脱細胞化マトリックスの作製条件を最適化し、さらに細胞接着性を有することまで見出している。一方で、幹細胞性を含むその他の細胞機能の評価には至らなかったが、これは特許出願の準備を行っていたためである。 平成28年度中に行う予定であった細胞機能の評価は平成29年4月現在実施しているところであり、結果が出始めているところである。 若干の遅れはあるが速やかに取り戻せる見込みであり、また脱細胞化マトリックスの組成も生体内のfractonesに近いものであると考えられたため、幹細胞性の維持が期待される。さらに特許出願準備も順調に行っていることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、脱細胞化マトリックス上での細胞増殖性、幹細胞性の評価を行う。また同時に特許出願についても6月までに完了する。また、細胞内シグナルについても、bFGFおよびEGFシグナル伝達経路のシグナル分子のリン酸化レベルをウェスタンブロットで定量するとともに、未分化性維持に関与する転写因子の発現量についても同時に定量する。
|
Causes of Carryover |
当初の計画であれば脱細胞化マトリックス上で培養されたMEB5の幹細胞性の評価をリアルタイムPCR法を用いて評価する予定であったが、平成28年度中に上記の実験を行うには至らなかった。そのため、使用する予定であった試薬の購入をほぼ行わなかったため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本来平成28年度に購入する予定であったリアルタイムPCRに関する試薬を購入する。
|