2016 Fiscal Year Research-status Report
ケミカルダイレクトリプログラミングによるヒト線維芽細胞から褐色脂肪細胞誘導の試み
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16K15222
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
戴 平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20291924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 行正 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40735552)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / ダイレクトリプログラミング / 再生医療 / 低分子化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、低分子化合物を用いてヒト線維芽細胞から褐色脂肪細胞へダイレクトリプログラミング(直接誘導)を行うことである。初年度では当初の計画に基づき、基本となる7種類の化合物(SB-431542、CHIR99021、PD0325901、LDN-193189、Pifithrin-a、Forskolin、Rosiglitazone)を組み合わせ、ダイレクトリプログラミングの最適化を行った。その結果、Pifithrin-aの代わりにDorsomorphinを使用した組み合わせが、より効率よく褐色脂肪細胞を誘導することが判明した。またWntシグナル経路の活性化剤であるCHIR99021を除くことで、リプログラミングの効率が大きく促進することが判明した。これらの細胞の遺伝子発現をリアルタイムPCRによって解析したところ、脂肪を蓄えるために必要な遺伝子群だけでなく、同時に褐色脂肪細胞のマーカー遺伝子であるUcp1の発現が大きく誘導されていた。次に、免疫染色によってUCP1の発現と局在について解析したところ、誘導された脂肪様の細胞に強い染色が確認された。また 市販のMitoTrackerを用いてミトコンドリアを染色したところ、これらの細胞では褐色脂肪細胞の特徴である多量のミトコンドリアが局在していることが判明した。低分子化合物の組み合わせを3週間インキュベーションした後、化合物を除いた脂肪細胞用の培地で1週間培養すると、細胞内に脂肪がさらに蓄積するとともにUCP1の発現レベルの上昇が見られることからことから、褐色脂肪細胞の成熟化が確認された。そして1ヶ月以上化合物を除いて培養しても、線維芽細胞に戻ることなくその脂肪細胞様の形態とUCP1の発現が維持されることより、ダイレクトリブログラミングによって誘導された褐色脂肪細胞が安定してその状態を維持していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究では、低分子化合物のみによってヒト線維芽細胞から褐色脂肪細胞へのダイレクトリプログラミングに成功した。詳細な条件検討の結果、最も効率が良く褐色脂肪細胞へダイレクトリプログラミングする低分子化合物の組み合わせ、および培養のプロトコールを決定することができた。これにより生じた低分子化合物誘導性褐色脂肪細胞(ciBAs: chemical compound-induced brown adipocytes)は、生体内の褐色脂肪細胞に特異的な遺伝子の発現が見られ、特徴の一つである多量のミトコンドリアの局在が細胞質で観察されている。また化合物を除いて長期間培養しても、その脂肪細胞様の形態とUCP1の発現が維持されていることから、安定した褐色脂肪細胞へのダイレクトリブログラミングが行われているものと考えられる。このように本研究は順調に推移しており、現在のところ特に問題点はない。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究により、低分子化合物によるヒト線維芽細胞から褐色脂肪細胞へのダイレクトリプログラミングに成功したため、今後の研究はこれらの細胞の機能的な解析が主となる。具体的には、褐色脂肪細胞内のミトコンドリアのエネルギー代謝を解析するため、酸素消費量(OCR)の測定を行う予定である。またこの結果を解析することで、ミトコンドリアの内膜に局在するUCP1によるProton Leakの量が実際に増加していることを実証する。また生体内の褐色脂肪細胞と同様に、ノルアドレナリン刺激による細胞中のcAMP上昇に応答しUCP1などの熱産生遺伝子(Thermogenic genes)が誘導されるかどうか調べるため、アドレナリン受容体作動薬IsoproterenolあるいはForskolinを投与しUcp1の発現量を調べる。その他、マクロアレイによって網羅的に遺伝子発現を解析することで、iPS細胞から誘導された褐色脂肪細胞と比較し、どの程度似ているか、またどこに相違があるかについて解析する。また、各低分子化合物が制御するシグナル伝達経路の下流に位置する転写因子および標的遺伝子に注目し、ダイレクトリプログラミングのメカニズムについても解明を目指す。並行して、褐色脂肪細胞を免疫不全ヌードマウスに移植し、動物モデルにおける糖および脂質の代謝の改善についてその機能解析を行う予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Highly sensitive fluorescence detection of metastatic lymph nodes of gastric cancer with photo-oxidation of protoporphyrin IX.2016
Author(s)
Koizumi N., Harada Y., Beika M., Minamikawa T., Yamaoka Y., Dai P., Murayama Y., Yanagisawa A., Otsuji E., Tanaka H., and Takamatsu T.
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Journal Title
Eur. J. Surg. Oncol.
Volume: 42
Pages: 1236-1246
DOI
Peer Reviewed
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