2016 Fiscal Year Research-status Report
フォルムアルデヒド分解酵素ADH5遺伝子欠損による再生不良性貧血ー高SCE症候群
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16K15243
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平 明日香 京都大学, 放射線生物研究センター, 研究員 (30772777)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルデヒド / ADH5 / ALDH2 / 小児骨髄不全 / ファンコニ貧血 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は、骨髄不全・MDSを発症した日本人小児症例において、フォルムアルデヒド分解酵素であるADH5 (Alcohol dehydrogenase 5, ClassIII)の両アレル変異を6名に見出した。さらにこれらの症例は、全例、アセトアルデヒド分解酵素ALDH2(Aldehyde dehydrogenase 2)の機能欠損ヘテロ変異を伴っていた。 アルデヒドは、外因性のみならず細胞内代謝によっても産生され、種々のDNA損傷を引き起こすことが想定される。ALDH2やADH5単独欠損マウスでは、造血障害を示さない。しかし、小児骨髄不全を発症するファンコニ貧血(Fanconi Anemia; FA)の重要な原因遺伝子であるFANCD2と、アルデヒド分解酵素のダブルノックアウトマウスは、再生不良性貧血や白血病の発症によって早期に死亡することが報告されている(Langevin et al., Nature 2011; Pontel et al., Mol Cell 2015 )。これらの結果は、骨髄幹細胞において内因性アルデヒドが産生され、ADH5とALDH2が協調してその除去を行っていること、除去不十分な場合にひきおこされるDNA損傷は、DNA修復を行うFA原因遺伝子群によって解除されており、その不全状態では骨髄幹細胞の障害が惹起されることを示唆している。ヒトにおいては、ADH5とALDH2が正常機能でもFA分子異常で骨髄不全が発症し、FA分子が正常でもADH5/ALDH2複合欠損により骨髄不全とMDSが発症することを示している。 本研究の目的は、原因不明であった小児骨髄不全の一群の患者の存在を証明し、その病態の本質を明らかにし、その診断と治療手段開発への第一歩となる研究である。さらに、基礎医学的には造血幹細胞におけるアルデヒド代謝の意義について重要な知見をあたえるものとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞バンク内に登録されている原因不明の骨髄不全の小児の検体で、染色体断裂試験陰性のためFAとは診断できない再生不良性貧血症例サンプルで姉妹染色分体交換(SCE)高値を示す例が登録されていることに気づいた。我々はこれらのサンプルを全エクソーム解析に附し、うち3例でフォルムアルデヒド分解酵素であるADH5の両アレル変異を検出した。さらに東海大学の原因不明の先天性骨髄不全の小児2名、他院の小児1名においても両アレルに、先の3例と同一の変異を認めた。また患者にみられた2種類の変異は、アレル頻度の解析で、世界的にもEast Asianのみに存在する稀少な変異であり、その病的意義は高いと考えられた。また。、4名の患者においては両親や兄弟の検体を提供いただき、常染色体劣性遺伝様式で発症することを確認した。 5名の患者繊維芽細胞を用いてADH5の発現解析を行ったところ、ADH5の蛋白レベルでの発現は低下していた。mRNAレベルでは低下していなかった。また患者群にみられた3種類のミスセンス変異型ADH5をHEK-293T細胞に導入したところ、発現レベルは正常型に比較して大きく低下していた。 患者2名からiPS細胞を樹立し、インビトロで造血分化の検証を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、樹立したiPS細胞を用いて、健常人のiPS細胞でADH5とALDH2をノックアウトし、疾患iPS細胞ではADH5を戻して、造血分化の程度で機能を評価する。 また病態を明らかにするにあたり評価が不可欠なSCEに関しては、日本人の健常人でALDH2のGG/GA/AAの3タイプの末梢血リンパ球において、ADH5のインヒビターであるN6022を入れ、SCEを評価する。 ALDHには19のアイソフォームがあり、それらとADH5の機能的関係を、siRNAライブラリスクリーニングを用いてより詳細に検討する。ALDH2のみならず、他のALDHとADH5の関係も明らかにすることによって、アルデヒド代謝全般の理解が大きく進展することを期待している。
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Causes of Carryover |
iPS細胞の分化誘導を次年度の予定としているため、直前に試薬を購入したいため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の消耗品の購入に使用し、iPS関連の実験を行う予定である。
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[Journal Article] The phenotype and clinical course of Japanese Fanconi Anaemia infants is influenced by patient, but not maternal ALDH2 genotype.2016
Author(s)
Yabe M, Yabe H, Morimoto T, Fukumura A, Ohtsubo K, Koike T, Yoshida K, Ogawa S, Ito E, Okuno Y, Muramatsu H, Kojima S, Matsuo K, Hira A, Takata M.
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Journal Title
British Journal of Haematology
Volume: 175(3)
Pages: 457-461
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Common variable immunodeficiency caused by FANC mutations.2016
Author(s)
Yujin Sekinaka,Noriko Mitsuiki, Kohsuke Imai, Miharu Yabe, Hiromasa Yabe, Masatoshi Takagi, Ayako Arai, Kenichi Yoshida, Yusuke Okuno, Yuichi Shiraishi, Kenichi Chiba, Hiroko Tanaka, Satoru Miyano, Seiji Kojima, Asuka Hira, Minoru Takata, Osamu Ohara, Seishi Ogawa, Tomohiro Morio, and Shigeaki Nonoyama
Organizer
The 17th Biennial Meeting of the European Society for Immunodeficiencies (ESID 2016)
Place of Presentation
Barcelona, Spain
Year and Date
2016-09-21 – 2016-09-24
Int'l Joint Research
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[Presentation] Myelodysplastic syndrome and acute myeloid leukemia in Japanese Fanconi anemia patients.2016
Author(s)
Miharu Yabe, Tsuyoshi Morimoto, Akiko Fukumura, Keisuke Ohtsubo, Takashi Koike, Takashi Shimizu, Hiromitsu Takakura, Katsuyoshi Koh, Etsuro Ito, Seiji Kojima, Asuka Hira, Minoru Takata and Hiromasa Yabe.
Organizer
28th Annual Fanconi Anemia research frund Scientific Symposium.
Place of Presentation
Bellevue, WA USA
Year and Date
2016-09-15 – 2016-09-18
Int'l Joint Research
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