2016 Fiscal Year Research-status Report
卵巣明細胞癌の新規バイオマーカーLefty遺伝子の同定、機能解析、そして臨床応用
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16K15250
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
梶田 咲美乃 北里大学, 医学部, 講師 (60194734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三枝 信 北里大学, 医学部, 教授 (00265711)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Lefty / 卵巣明細胞癌 / TGF-beta / Smad2 / アポトーシス / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、卵巣癌臨床検体のホルマリン固定パラフィン切片から抽出したタンパク質で、ショットガンプロテオミクス法による網羅的解析を行い、Left right determinant factor(Lefty)が卵巣明細胞癌のバイオマーカーになりうる可能性を見出した。次に、卵巣癌におけるLefty発現を検索した結果、臨床検体で、① 卵巣明細胞癌でLefty遺伝子はmRNA・タンパク質レベルで特異的に高発現し、②アポトーシスと正の相関、細胞増殖能と負の相関を示した。一方、卵巣明細胞癌の培養細胞で、③TGF-beta刺激より活性型のリン酸型(p)Smad2とLeftyの発現増加と、④Lefty過剰発現による細胞増殖抑制と抗癌剤によるアポトーシス誘導促進を認めた。更に、⑤卵巣明細胞癌細胞の間葉系幹細胞培養液(STK)での培養により、pSmad2とLeftyの発現増加とともに明瞭な上皮間葉転換(EMT)が誘導された。加えて、この現象は外因性Lefty遺伝子の導入により抑制され、内因性Lefty遺伝子のノックダウンにより増強した。これらの結果と、癌細胞は自身や周囲間質細胞が産生するTGF-betaによるEMT/癌幹細胞化誘導を介して浸潤・転移能を獲得する事実を勘案して、申請者は「Leftyは、①TGF-β/Smad系と密なクロストークを示し、卵巣明細胞癌の低細胞増殖能および抗癌剤耐性に中心的役割を演じる。②TGF-β/Smad依存性EMT/癌幹細胞化の制御因子として卵巣明細胞癌の腫瘍進展・転移を規定する。③Leftyを中心としたシグナルネットワークの解明は、卵巣明細胞癌の新たな生物学的特性の提唱と本シグナル阻害剤による新規分子標的治療法開発への応用に展開できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度はLefty遺伝子の機能解析を中心に行い、卵巣明細胞癌でのLefty遺伝子の果たす役割を分子レベルで解明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の結果をもとに、Lefty遺伝子を用いた卵巣明細胞癌の血清診断法の確立に着手する。具体的には血清エキソソーム(脂質二重層で構成され、内部にmRNA, rRNA, ncRNAなどの基質を有する多蛋白複合体で、しばしば細胞から放出される小胞)を用いるという斬新なアイディアを立案し、超遠心法で得られた血清中のエキソソームを対象に、血清中Lefty mRNAを検出する予備実験に着手し、子宮内膜症性嚢胞患者の卵巣明細胞癌発症リスクを予知するシステムの構築にチャレンジする。
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Causes of Carryover |
実験が比較的スムーズに進み、当初予定していた予算を下回る消耗品の使用であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
血清エクソソームの検出に関して、大幅な費用増加が想定される。
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