2016 Fiscal Year Research-status Report
動物モデルによるエンドセリンA型受容体遺伝子異常症の発症メカニズム解明と病態予測
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16K15254
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗原 由紀子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (80345040)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エンドセリン受容体 / ヒト遺伝子異常症 |
Outline of Annual Research Achievements |
CREISPR/Cas9システムを用いone point mutationを挿入することにより得た、2種類のETAR遺伝子異常症モデルマウスの表現型の解析からヒトのETAR遺伝子変異症とかなり近い表現型が得られた。外見上では耳介、眼瞼と、頭部顔面の骨格系では上顎部分の骨とキヌタ骨の第一鰓弓上顎成分の異常が見られ、これらはヒトのETAR遺伝子変異症と同様であった。一方、頭髪/体毛の減少ははっきりせず、今後、毛周期などの詳細な解析や、剃髪後の発毛に異常があるか、また、マウスとヒトの毛の発生の違いを調べていく必要があると思われる。また、エンドセリン3(Edn3)のノックアウトマウスもmature Edn3をコードするエクソン2の一部を欠損させるデザインでCREISPR/Cas9システムを用いて作成した。これらのマウスの掛け合わせから得られたmutant ETAR:Edn3-/+では、おおよそ表現型が正常に戻り、異所性にEdn3-ETARシグナルが活性化したことが表現型の原因であることが明らかとなった。 そこで、立体構造的に全く違う場所に位置する2つのone point mutationで何故同じ表現系が出るのかその機序を明らかにするために、まず細胞株でmutant ETARを過剰発現させることで、Edn1, Edn3リガンドに対するそれぞれのETARからのシグナルのアウトプットを評価した。GPCRであるETARは、少なくとも顎顔面形成においてはGqが主体であるので、細胞内カルシウムとERKの活性化を指標に、Edn3-mutant ETARシグナルが活性化したことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
目的の各種遺伝子改変マウスを作成し表現型を解析できたのみでなく、遺伝子異常から表現型が現れる分子メカニズムにまで踏み込むことができている。メカニズムは申請の段階よりもより深いレベルでの検討がなされようとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
立体構造的に全く違う場所に位置する2つのone point mutationで何故同じ表現型が出るのかその機序を明らかにするために、ligand binding affinity, Gq activation, in silicoでの立体構造変化を精査する。また、毛に関しては、毛周期などの詳細な解析や、剃髪後の発毛に異常があるか、マウスとヒトの毛の発生の違いなどを調べていく。臨床的重要性からも腫瘍形成促進の可能性について、p53ノックアウトマウスとの交配を進めることで胸腺腫発症時期の早期化や他の臓器における腫瘍形成の有無について解析する。
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Causes of Carryover |
エンドセリン3ノックアウトマウスや2つめのエンドセリン受容体変異マウスをCRISPR/CASで作成するための分子生物学的試薬で高価なキットやベクターを購入予定であったが新規に購入しなくても目的を達成することができた。また、他の分子生物学的試薬もキャンペーン等で予想以上に安価に購入することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度は細胞内カルシウム測定試薬、抗体など、特殊なものが多くなり、繰越金も使えるとありがたい。また、マウスの繁殖、各種遺伝子との掛け合わせが増え、マウスの管理維持にさらに経費がかかる予定である。 さらにH29年度は病態モデル作成と解析、論文投稿に費用をかけたい。
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Research Products
(3 results)