2017 Fiscal Year Research-status Report
プロテオミクスを用いた腺粘液糖鎖による胃癌発生制御機構の解明
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16K15255
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中山 淳 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10221459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
春宮 覚 信州大学, 医学系研究科, 助教(特定雇用) (50301792)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胃癌 / 糖鎖 / プロテオミクス / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
胃腺粘液に特徴的な糖鎖であるαGlcNAcを欠損したA4gntノックアウト(KO)マウスはピロリ菌が感染していなくても胃粘膜に炎症が生じ、過形成から異形成を経て分化型胃腺癌を自然発症するユニークな疾患モデルである。本研究の目的は新たな胃癌の予防・治療法の開発を目指し、上記の新規モデル動物を用いて粘液糖鎖シグナルと発癌制御機構との関係を解明することである。平成28年度では野生型マウスの胃粘膜を解析することで、αGlcNAcが結合し、かつ発癌との関連が示唆される分子量約25kDaの糖蛋白質を同定したので、平成29年度は先ず、免疫沈降-イムノブトット分析により、野生型マウス(5週齢、10週齢; n=2-5)の胃粘膜でこの糖蛋白質はαGlcNAcと結合する一方、A4gnt KOマウス(5週齢、10週齢; n=2-5)の胃粘膜ではαGlcNAcが欠損していることを確認した。次に、イムノブトット分析により、この糖蛋白質の下流で働くシグナル分子であるAKTとERKのリン酸化が野生型マウス(10週齢; n=2)と比べてA4gnt KOマウス(10週齢; n=2)でより亢進していることを示した。さらに、平成29年度は野生型マウス(10週齢; n=3)の胃粘膜からHIK1083ラテックス及びGSA2レクチンアガロースを用いてαGlcNAc結合糖蛋白質を調製、質量分析によりαGlcNAcが結合している糖蛋白質として、既知のMUC6とMUC5ACに加えて、データベース登録上での分子量が約20kDa、約14KDa、約9.6KDaの糖蛋白質を新たに同定した。次年度はこれら新規に同定された糖蛋白質のうち、胃癌との関連が報告されている分子量約14kDaの糖蛋白質を中心に解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度以降の実験計画に掲げたプロテオーム解析の結果から、発癌との関連が示唆される分子量約25kDaの糖蛋白質を同定した。この糖蛋白質は野生型マウスを用いた免疫化学的解析から、αGlcNAcの結合が示された。また、この糖蛋白質の下流で活性を有する発癌関連シグナル分子であるAKTとERKのリン酸化はA4gntノックアウトマウスの胃粘膜で、野生型マウスと比較し亢進していることを確認した。最後に、αGlcNAcが結合し得る新規の糖蛋白質を3種類同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
同定された糖蛋白質のうち、発癌との関連が示唆されている約25kDaと約14kDaの糖蛋白質を中心に、発癌シグナルの観点から野生型マウスとA4gntノックアウトマウスを対象に解析を行う。また、これら糖蛋白質に結合する糖鎖の構造解析を行う予定である。
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