2017 Fiscal Year Research-status Report
アメーバ共生細菌原始クラミジアのレジオネラ撃退に関わる分子マシナリーの探索
Project/Area Number |
16K15270
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 博之 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40221650)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 眞二 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40207882)
松尾 淳司 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (50359486)
大久保 寅彦 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (90762196)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 環境クラミジア / アメーバ / ネオクラミジア / 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
私達が札幌の土壌より独自に株化した原始的なクラミジア(難培養性細菌ネオクラミジア: Neochlamydia S13株)が共生するアメーバは、アメーバの天敵レジオネラ(Legionella pneumophila JR32やLp01株)を撃退する。この機構の解明研究からこのアメーバがクラミジアを共生させる必然性を明らかにすることが本研究の目標である。本年度は、以下の実験を行い幾つかの成果を得た。まずこれ迄のDNAマイクロアレイを用いた検討から、レジオネラを感染に伴い発現増加する共生細菌ゲノム上の一つのキメラ様遺伝子peg2639 (セリン・スレオニンキナーゼ: C末端約260アミノ酸残基のキナーゼ部分とNCBIデータベースに全くヒットしないN末端約400アミノ酸残基をコードする)の組換蛋白の発現と精製を会合蛋白を同定するために試みた。しかしながら現段階では可溶化に成功していない。また幾つかのIV型分泌装置変異体を感染させた共生アメーバ内ネオクラミジア遺伝子発現をDNAマイクロアレイで精査したところ、野生型レジオネラを感染させた共生アメーバと比較してほとんど変化は認められなかった。その一方、電顕にて感染頻度は極めて低いが一旦侵入したレジオネラは、この共生アメーバ内で正常に増殖できることを見つけた。さらにアクチン分解を指標としたプロテオーム解析も共生アメーバへのレジオネラの感染率が低いことを支持していた。また共生アメーバが寒天培地上で、共生細菌依存的に大腸菌、サルモネラ、緑膿菌を生きたまま運搬する現象も見つけ(黄色ブドウ球菌は運ばない)、大腸菌を運搬する共生アメーバが、寒天培地上形成させたレジオネラの増殖帯(壁)を突破できることも発見した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたキメラ様遺伝子peg2639の発現実験は成功していないが、以下の2つの現象を新たに発見したので、「おおむね順調に進展している」とした。 1. レジオネラ撃退現象の機構が、撃退するためでなく共生細菌が宿主アメーバの何らかの欠点を補完するために配備されていることを見出したこと。 2. このアメーバが寒天培地上で、共生細菌依存的に大腸菌、サルモネラ、緑膿菌を生きたまま運搬する現象も見つけ(黄色ブドウ球菌は運ばない)、大腸菌を運搬する共生アメーバが寒天培地上形成させたレジオネラの増殖帯(壁)を突破できることも発見したこと。
|
Strategy for Future Research Activity |
この共生アメーバのレジオネラ撃退機構の全貌を明らかにするために、最終年度は以下の検討を行う。 1. 無細胞蛋白発現系を用いたpeg2639遺伝子組換えタンパクの発現を行い精製蛋白を用いてpull-down assayを行い会合タンパクを同定 2. FIB/SEMなど3次元画像解析から、共生アメーバの形態を超高解像度で可視化する。 3. 共生アメーバがヒト病原細菌を背負い寒天上を運ぶ分子機構を解明するために大腸菌Tn変異体ライブラリーを構築し、大腸菌と共生アメーバの相互作用を規定する分子の同定を目指す。
|