2016 Fiscal Year Research-status Report
細菌の外膜小胞OMVを利用した病原性大腸菌特異的な感染制御法の開発
Project/Area Number |
16K15275
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸邉 亨 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70207596)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | OMV / ompT / LPS |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌は通常の培養条件下でも外膜小胞(OMV)を産生するが、より効率よく産生させる条件を検討した。一つの手法は、OMVの産生の調節に関与する報告のあるompT遺伝子の効果について検討した。その結果、OMVの産生量はompT遺伝子の発現と正に相関することが確認できた。さらに、OmpT蛋白質の産生量を段階的に増加させたところ、ある閾値を越えるとOMV放出量がOmpTの増加とともに増大することを見いだし、OmpT蛋白質は積極的にOMV産生を促進する因子であることを明らかにした。もう一つは、LPSの構造変化によるOMVの産生量に対する効果を検討した。lipid Aの脱アシル化酵素の一つであるLpxRを大腸菌に導入し、そのOMV産生に対する効果を検討したところ、効果は弱いがOMVの産生量の増加が認められた。LpxRによるlipid Aの改変は、同時にエンドトキシン活性も減弱させることを明らかにしており、lpxR遺伝子もOMV生産に利用できると考えられた。一方、OMVの効率的な精製方法の開発も行った。従来のOMVの精製方法は、超遠心分離法や、さらに純度を上げる為には密度勾配遠心法が用いられてきた。これらの方法では、大量にOMVを精製するには多くの時間と労力を要し、実用的ではない。そこで、affinity columnによる精製手法を開発することにした。LPSの普遍領域に親和性のある分子を用いることとした。この分子を、まず大量精製し、菌の表層への親和性を検討したところ、予想通り、菌表層に特異的に結合することを確認した。次に、部分精製したOMVとの結合性を検討したところ、大腸菌K-12株由来のOMVを精製することに成功した。今後は、これをもとに他の大腸菌や異なる菌種由来のOMVも精製できるよう改変する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OMVの産生量を増加させる遺伝子を2つ同定することができ、これらを利用することで人為的に多量のOMVを産生させることができることを明らかにできた。また、OMVの精製手法の開発についても、今後の発展に繋がる道具を見いだすことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
OMVの生産性を向上させる方法の開発を引き続き行う。また、OMVの精製手法についても改良を行い、より普遍的に簡便な方法の確立を目指す。一方、初年度では、ほとんど着手できていなかった標的菌種の増殖抑制因子の開発を行う。
|
Causes of Carryover |
前年度に投稿した論文が年度内に採択にならなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の投稿料の一部として使用予定です。
|
Research Products
(2 results)