2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K15283
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
末永 忠広 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (20396675)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エボラウイルス / NK細胞 / 膜融合 / エントリー / 細胞障害活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
エボラウイルスは、ウイルスグリコプロテイン分子(Ebo-GP)を宿主側レセプター分子と結合させることによって宿主細胞内に侵入(エントリー)することが知られている。Ebo-GPと結合し宿主細胞表面に発現する新規レセプター分子EGPRを同定し、Ebo-GPとEGPRとの結合がエボラウイルスのエントリーに関与するメカニズムを解析した。エンベロープを有するウイルスのエントリーにおいては、ウイルスエンベロープと宿主細胞の膜との融合(フュージョン)が必須である。EGPR発現細胞は、コントロール細胞に比較してEbo-GP発現細胞とのフュージョン効率を増大させた。また、EGPR発現細胞は、コントロール細胞に比較してEbo-GP発現シュードウイルスに対して高感染感受性であった。以上よりEGPRはEbo-GPと結合し、エボラウイルスのエントリーを増強することがわかった。 一般にヒトやマウスをはじめとする哺乳動物へのウイルスの初回感染においては、ウイルスやウイルス感染細胞の排除のために、まず自然免疫系が反応する。ウイルス排除の中心的役割を担う自然免疫系における免疫担当細胞のひとつがNK細胞である。本研究では、NK細胞を活性化する分子EGPIMとそのリガンドとの結合をEbo-GPが阻害することがわかった。さらに、Ebo-GP発現細胞は、コントロール細胞に比べて、NK細胞の活性化を阻害することが明らかとなった。以上のことは、エボラウイルスが宿主免疫から逃避するメカニズムのひとつであることを示唆すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エボラウイルスのエントリーにおけるフュージョンは、これまで、細胞内に存在するエンドソームなどの膜が宿主側のパートナーといわれてきた。研究代表者のフュージョンアッセイの結果から、フュージョン効率の増大が、エンドソームをはじめとした細胞内環境との関わりの有無などを詳細に解析する必要が生じてきた。また、Ebo-GPは糖鎖に富む分子であるので、糖鎖がEGPRを介したエボラウイルスのエントリーに関与するか否かの検討も必要である。さらに、エボラウイルスには5つの代表的な株がある。各エボラウイルス株のEbo-GPに関して、EGPRとの結合性、EGPR発現細胞とのフュージョン効率や、EGPR発現細胞へのエントリー効率を解析することが、グローバルな視点において、エボラウイルス感染におけるEGPRの関与の全体像を把握する上で必要であると考えられる。 また、Ebo-GPは、当初同定した分子だけでなく複数の分子と結合し、NK細胞活性を制御していることがあきらかになってきた。従って、新たに判明した個々の分子に対するEbo-GPの細胞活性化に対する制御機構の解析も必要になってきた。すなわち、EGPIMと各リガンドの結合をEbo-GPが阻害する際に、結合阻害の効率に差があるのか、あるいは、生理的にこれら複数のリガンドとの結合阻害が相加的なものなのか、あるいは一つだけあれば十分なのかなども合わせて検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
EGPR発現細胞におけるエントリー機構の解明において、細胞内環境を模したフュージョンアッセイを行う。また、Ebo-GP発現シュードウイルスを用いて、EGPR発現細胞における膜融合活性発現箇所を顕微鏡下で詳細に解析する。各エボラウイルス株のEbo-GPをcloningし、EGPRと結合するかどうか、株間で結合度に差があるかどうかを解析する。Ebo-GP発現細胞とEGPR発現細胞のフュージョン効率を、フュージョンアッセイにて解析する。さらに、各エボラウイルス株由来Ebo-GP発現シュードウイルスを用いて、EGPR発現細胞へのエントリー効率を算出する。これらによって、エボラウイルス株間でのEGPRを介したエントリー効率の違いを明らかにする。 EGPIMと各リガンドの結合をEbo-GPが阻害する際に、結合阻害の効率に差があるのかを、EGPIMと個々のリガンドの結合を、リガンドを個別に発現させた細胞において、Ebo-GPとの競合実験を行い、阻害効率を明らかにする。さらに、NK細胞ライン及び末梢血から得たNK細胞などを用いて、Ebo-GP発現細胞のNK細胞活性を解析するが、その際、各リガンド分子発現をCRISPR/Cas9やRNA干渉で制御するなどして、各分子のNK細胞活性への寄与度を測定する。
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Causes of Carryover |
膜融合アッセイからEGPRによる膜融合効率の増大が判明した。EGPRの発現局在から、これまでの定説であるエンドソームでの膜融合とは異なる機構が存在している可能性があり、EGPRを介した膜融合が行われる細胞局在解析をする必要性が生じた。また、EGPRは他のフィロウイルスであるマールブルグウイルスのGPとは結合しないことが明らかとなった。エボラウイルスにも5つの株があり、相互のEbo-GPの特徴も異なる。各株のEbo-GPとEGPRとの関連性の解析は、グローバルな視点で、EGPRが関わるエボラウイルス感染像の把握に有用である。 Ebo-GPは、当初同定したEGPIM-L以外の複数分子と結合しNK細胞活性を制御することがわかってきた。EGPIMと新たに判明した分子の結合に対するEbo-GPの阻害効率を分子毎に解析し、Ebo-GPの細胞活性制御機構を各分子及び細胞レベルで明らかにする必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
EGPR発現細胞において、細胞内環境を模した膜融合アッセイを行う。また、Ebo-GP発現シュードウイルスを用い、EGPR発現細胞における膜融合活性発現箇所を顕微鏡下で解析する。各エボラウイルス株のEbo-GPをcloningし、EGPRとの結合性、EGPR発現細胞との膜融合効率、シュードウイルスのEGPR発現細胞へのエントリー効率を株間で比較する。 EGPIMと各リガンドの結合に対するEbo-GPによる阻害効率を、リガンドを個別に発現させた細胞においてEbo-GPとの競合実験を行い、解析する。さらに、NK細胞ライン及び末梢血から得たNK細胞などを用いて、Ebo-GP発現細胞に対するNK細胞活性を解析するが、その際、各リガンド分子発現をCRISPR/Cas9やRNA干渉で制御するなどして、Ebo-GP制御下での各分子のNK細胞活性への寄与度を測定する。
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