2016 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍増大モデルに基づいた癌の定期スクリーニング検査の有効性・費用対効果の検討
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16K15303
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石田 博 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50176195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪飼 宏 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (70522209)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / スクリーニング検査 / 腫瘍容積倍加時間 / 予後 / 費用対効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 腫瘍増大モデルに必須となる腫瘍容積倍加時間(TVDT)についての調査:PubMedおよび医学中央雑誌をもとに文献検索を行い、22の該当論文を取得し、その中で個々の患者のTVDTが取得可能な10論文から216名の患者におけるTVDTの推定を全体、ウイルス別、国内・外別で行った。 2.腫瘍径別の腫瘍ステージ頻度調査:肝癌治療ガイドラインに沿って発見時の腫瘍径区分(3cm以下、3~5cm以下、5cmより大)での腫瘍径、腫瘍数、遠隔転移の有無などを検討した疫学研究の論文調査を行っているが、現時点でモデルに利用可能な結果を見いだし得ていない。 3. 定期的スクリーニング検査の診断特性調査:alpha-fetoproteinなどの腫瘍マーカーおよび超音波検査の腫瘍径区分での診断特性(感度、特異度)の論文調査を進めている。 4.肝細胞癌の治療アルゴリズムによる予後調査:肝細胞癌治療ガイドラインに則り、第19回全国原発性肝癌追跡調査のデータをもとに根治術となる肝切除術および経皮的局所療法の生存曲線から3cm以下、3~5cm以下での腫瘍径区分毎、非代償性肝硬変の有無による年間死亡確率、および、モデル上5cmより大の癌に対し治療選択とするTranscatheter arterial chemoembolization(TACE)の肝障害度別、非代償性肝硬変の有無による年間死亡確率について推定した。 5.今回の研究で得られたTVDTとその増大形式(指数関数、ゴンペルツ関数、遅発指数関数)における肝細胞癌増大モデルでの推定する時間経過後、および、発見のタイミングによる腫瘍径区分別の治療選択とその予後推定とを組み合わせ、発見までの時間経過とその予後を検討するマルコフモデルを構築した。平成29年度に本モデルを基盤にスクリーニング検査、有症状における受診や偶発的な機会での肝細胞癌発見後の腫瘍径区分毎の確率分布とその予後を組み合わせたスクリーニング効果を検討可能とするモデルに改善する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究においてモデルの基盤となる腫瘍径別の診断特性等のエビデンスは、既存の観察研究の結果によるため、その文献調査を進めている。国内外では医療環境が異なることから、まず、国内の観察研究の論文を中心に検討を行い、より適切なデータの取得を目的に海外の観察研究に拡大するプロセスで進めているため、当初予定していた作業補助者の欠員もあり、大量の文献調査とそのまとめ(メタ解析)に時間を要している。 また、モデル構築においては、腫瘍増大モデルにおける起点はそれぞれの個人の細胞単位の発生時点からなり、当初、ある年齢時点からの発生・増大モデルを作成したが、スクリーニング開始のタイミングやモデルにおける肝細胞癌の発症率の確率的感度分析などを考慮すると煩雑となるため、一定の腫瘍径(1cm)になった場合に発症と定義し直し、腫瘍容積増大速度と組み合わせたモデルに組み変えたこと、また、有症状における進行癌状態での発見後の予後推定が未解決であることなどによりモデル完成が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)定期スクリーニングに用いられる検査の腫瘍径区分別の診断特性値の文献調査の推進と可能な限りメタ解析を促進し、さらに有症状や偶発的な発見における肝細胞癌の状態(腫瘍径やステージなど)についての疫学研究により適切なデータの収集を進める。この中で、できる限り、観察研究によるデータの取得に努力するが、適切なデータが見いだせない場合には、他の同様の費用対効果研究で用いられたデータを参考にする、あるいは、専門医の推定による値を用いるなどの対策をとる。 2)初回治療後の再発とその治療種別の頻度、それに伴う治療期間、および、非治療期間の医療費の推定について自施設でのRetrospectiveな調査研究を開始する。 3)1)2)をもとにした肝細胞癌の定期スクリーニングに対する費用対効果モデルを、さらに文献調査等による肝細胞癌の効用値を組み入れたモデルに修正、完成させ、検討を行い結果について発表を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた国外学会申し込みに成果結果が間に合わず断念したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国外学会へ参加し、成果発表をする。
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