2016 Fiscal Year Research-status Report
フローサイトメトリーを用いた光線力学診断による多発性骨髄腫微小残存病変の検出
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16K15324
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
張替 秀郎 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50302146)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内科 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血器腫瘍において厳密に治療効果を判定するためには、骨髄中に少数残存する腫瘍細胞(微小残存病変)を高感度で検出することが重要である。ヘムは酸素運搬だけでなく、ミトコンドリアでの電子伝達系、薬物代謝、遺伝子発現など細胞の生存にかかわる様々なたんぱく質の機能に必須の補欠分子である。ヘムはミトコンドリアで合成されるが、がん細胞ではワールブルグ効果により解糖系が優先され、ミトコンドリアの活性が低下しているため、ヘム合成が不全状態にある。従って、がん細胞にヘムの材料であるアミノレブリン酸(ALA)を投与すると、最終的なヘム合成に至らず前段階のプロトポルフィリンIX(PPIX)が蓄積する。PPIXは、励起光を当てると蛍光を発することから、この蛍光を検出することにより特異的にがん細胞が同定可能である。そこで、本研究ではこの理論とフローサイトメトリーを組み合わせた新たな造血器腫瘍の微小残存病変の光線力学診断法を確立することを目的とした。本年度は、造血器腫瘍の中でも多発性骨髄腫を対象として研究を進めた。ALA輸送体であるSCL36A1遺伝子を発現する骨髄腫細胞株であるKMS18細胞を用いてALA添加濃度、反応時間、の至適化を図った。その結果KMS18細胞でPPTX蓄積による蛍光発光が100%、正常の血球でほぼ未発光の条件が得られた。これらの条件は臨床検体を用いる検査法として採用し得る条件であった。次の段階として、細胞株だけでなく、primaryの骨髄腫細胞においてもこの至適条件が有効であるかどうか検討する必要がある。現在、この検討のために臨床検体の確保を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨髄腫細胞株においては目的とする反応条件が得られたため、初年度としてはおおむね順調な進捗と判断した。ただし、いくつかの課題が残っている。一つは正常血球の中で単球にて、PPIXの弱い発光が認められることである。骨髄腫細胞株と比較すると明確な発光強度の違いがあるため、分離は可能であるが、primaryの骨髄腫細胞との分離が可能かどうか検証が必要である。これに関連して、primaryの骨髄腫細胞に対しこの至適条件が適当であるかどうか検証が必要であるが、十分な臨床検体が現時点では確保できていない。また、微小残存病変検出法として確立するには、骨髄に少数残存する骨髄腫細胞を検出する感度が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず行うべき検討は、primaryの骨髄腫細胞をもちいて、初年度の確立した至適条件で同様の発光が認められるか、である。この点については、臨床検体の確保が必要であるが、一般的に多発性骨髄腫においては骨髄細胞中の腫瘍細胞の比率が高くなく、純度の高いprimaryの骨髄腫細胞がどれだけ得られるかが課題である。 本法の検査感度については、骨髄腫細胞株と正常骨髄を段階的に細胞数比率を替えて混和し作成した系をもちいて、細胞株レベルでどのくらいの検出感度が得られるか、検討する予定である。 これらの検討を経て、寛解状態にある多発性骨髄腫患者の骨髄細胞を用いて、本法が臨床的に有用な検査法となり得るか、最終的に評価することを考えている。
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