2017 Fiscal Year Research-status Report
透析患者の臨床試料を用いた痒み因子の同定と臨床治療への応用
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16K15337
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
安東 嗣修 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (50333498)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 痒み / 慢性腎不全 / β2マイクログロブリン / ヒスタミン |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎不全患者並びに慢性腎不全が原因で血液透析を受けている患者の多くが,非常に激しい耐え難い痒みを訴える。このような痒みには,痒みの第一選択薬である抗ヒスタミン薬が無効である場合が多く,新規鎮痒薬の開発が望まれている。昨年度,透析患者の血清中で増加しているβ2マイクログロブリンに着目し,β2マイクログロブリンが痒み因子であることを見出した。本年度,β2マイクログロブリンによる痒み反応の機序の解明を行った。マウスへのβ2マイクログロブリン誘発の痒み反応は,H1ヒスタミン受容体拮抗薬,トロンボキサン受容体拮抗薬,ロイコトリエンB4受容体拮抗薬,プロテアーゼ活性化受容体2拮抗薬では,抑制されなかった。TRPV1受容体発現陽性一次感覚神経は,痒みの伝達に関与することが知られている。そこで,カプサイシンを繰り返し処置し,TRPV1受容体発現陽性一次感覚神経を脱感作させたマウスを用いてβ2マイクログロブリンによる痒み反応が惹起されるかどうか調べたところ,この痒み反応は消失した。さらに,一次感覚神経の細胞体である後根神経節細胞の初代培養へβ2マイクログロブリンを作用させると,神経興奮のマーカーであるErkのリン酸化が認められた。また,このErkのリン酸化が認められた細胞では,TRPV1が発現していた。以上の結果から,β2マイクログロブリンによって誘発される痒み反応は,β2マイクログロブリンが直接TRPV1陽性一次感覚神経に作用し引き起こされることが明らかとなった。また,慢性腎不全の痒みのマウスモデルの作出にも成功し,皮膚においてβ2マイクログロブリンが増加していることが確認された。本マウスモデルを用いて痒みの発現機序の解析を行っている。さらに,昨年度から継続して,透析患者の血清成分分析並びに皮膚生検試料用いて痒みの有する患者と有しない患者との間で比較検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的は,透析患者の痒みの因子の同定である。その中で昨年度は,β2マイクログロブリンが痒み因子であることを同定し,本年度はその痒みの発生機序にTRPV1発現陽性一次感覚神経へのβ2マイクログロブリンの直接作用が関与することを明らかにした。また,連携研究者による痒みの有るあるいは無い透析患者の血清(血漿)や皮膚片の採取が順調に行われており,数十例の試料が集まっている。また,慢性腎不全による痒みの詳細な機序の解明に必要な動物モデルの作出にも成功した。以上のことから,研究が順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関して,以下の点を中心に解析を進める。 ①収集された透析患者の試料(血液,皮膚)を用い,2次元電気泳動並びにMALDI-TOFによる分析並びに変化因子の同定を行う。続いて,同定されて因子に関して,マウスを用いて痒み因子であるかどうか,並びに痒み発生機序の解析を行う。 ②上記研究に並行して,慢性腎不全掻痒マウスモデルの痒みの発生機序の解明並びに治療薬のスクリーニングを行い,連携研究者(透析クリニックの医師)への情報提供を行い,治療効果の検討を行って頂く。
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Causes of Carryover |
【当該助成金が生じた状況】変化タンパク質の同定を行う機器の長期調整による停止の影響で解析の進行が遅れ,それに伴う因子の痒みへの関与に関する検討を行うための試薬の購入ができなったため。 【翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画】解析機器の調整が完了したということで,変化タンパク質の同定が進められる。そこで,解析関連試薬を含む消耗品や,結果の公表に関する雑誌投稿・掲載費並びに学会での発表旅費等に研究費を使用する。
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