2016 Fiscal Year Research-status Report
免疫介在性有痛性神経障害発症に関与する病的抗原を同定する
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16K15339
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
栗原 崇 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (60282745)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有痛性神経障害 / 自己免疫疾患 / 受動移入 / 脊髄 / 一次知覚神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで生後6-8週齢の雄性ddY (クローズドコロニー) を用いた検討を行ってきたが、本年度は雄性C57BL/6J (近交系) マウスを用い、血清、および精製IgG (補体活性化の必要性の有無) の受動移入 (くも膜下腔投与) 後、疼痛行動学的試験 (機械的刺激および熱刺激に対する逃避行動試験) を行った。さらに、患者において有効であったメチルプレドニゾロン (3日間のステロイドパルス療法) と無効であった三環系抗うつ薬 (アミトリプチリン) の効果の検討も行った。その結果、C57BL/6J系統においても、本患者血清の移入は、患者の症状とよく似た疼痛行動を惹起しうること、そして薬物反応性に関しても患者に類似した特徴を再現し得ることが示された。 さらにC57BL/6Jマウス脊髄、一次知覚神経節、末梢 (坐骨) 神経などの組織切片に対して、患者血清および他の既知抗体を反応させる免疫組織化学的検討も進め、患者自己抗体および対応抗原の存在確認を行った。その結果、ある患者血清は小型の一次知覚神経と選択的に反応し、また別の患者血清においては、脊髄後角と良く反応することが判明した。すなわち、これらの患者においては、自己抗体およびそれに対応する抗原が確かに存在することが示唆された。 さらに現在、一次知覚神経節に対して免疫活性を示す上記患者血清を対象に、病的抗原決定に向けた検討を開始している。すでに、新生マウス一次知覚神経節神経細胞の培養を行い、培養細胞においても患者血清に対する免疫活性を保持していることを確認し、本組織と患者血清を用いた免疫沈降試験を行っている。免疫沈降後は、沈降物を二次元電気泳動-質量分析することによって、抗原決定を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、急性に疼痛発症し、比較的早期に回復する有痛性神経障害患者からの得られた血清を用いた動物実験結果をまとめ、臨床データと合わせた論文を投稿した。本論文において我々は、このような有痛性疼痛患者の状態を表す疾患名として、疼痛が主徴であることを医療関係者に意識させるPainful Auto-immune Neuropathy(PAiN)を新たに提唱している。現在、reviseに向けた実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の検討を引き続き行うとともに、新規に得られる予定の患者血清の効果を検討する。また、最近の検討結果から、ある患者血清では、脊髄くも膜下腔血清移入後疼痛発症まで、7日間の時間が必要であった。その理由は現在不明であるが、患者血清中の病的因子の作用発現までに、例えば脊髄後角における痛覚伝達の可塑的調節に時間が必要である可能性を考えている。そこで、脊髄痛覚伝達機能に対する評価を行うため、研究代表者らが普段使用している脊髄スライス標本を用いた電気生理学的検討を予定している。すなわち、正常マウスに患者血清をくも膜下腔投与し、一定時間後、脊髄スライス標本を作製し、後角II層ニューロンで記録されるシナプス応答を電気生理学的・薬理学的に評価する。
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Research Products
(1 results)