2016 Fiscal Year Research-status Report
画像工学的アプローチによる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断支援法への挑戦的試み
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16K15346
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
藤田 廣志 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10124033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 直希 愛知県立大学, 情報科学部, 助教 (00580945)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医用画像 / 画像工学 / 診断支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,指定難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の画期的診断支援を目的とし,全身の骨格筋を対象とした,骨格筋領域内の筋線維と脂肪織の同時解析を画像工学的アプローチにより実現する.ここでは,全身CT画像を用い,骨格筋の全自動認識とその部位別自動解析に挑戦する.ALSは有効な治療法が確立されていないが,2015年より進行抑制薬が承認されており,早期発見や筋萎縮を生じる他の疾患を確実に鑑別し,適切な治療に導くことは臨床上重要である.この目標は,全身CT画像から骨格筋の領域をヴォリュームとして捉え,筋領域の正確な特定と領域内の脂肪織の定量的な解析により実現する. 既に有する体幹部CT 画像における骨格筋の自動認識技術をベースに,ここでは,対象を胸腹部・四肢を含む人体全域を新たに対象とする.そして,部位間の骨格筋の解析を行うことで,筋萎縮を生じる疾患毎の違いを統計的に明らかにする.本研究により,ALSと筋萎縮を生じる他の疾患であるミオパチー,ニューロパチーおよび変形性頸椎症などの鑑別を目指す.さらに,ALSは筋の進行性萎縮を伴う疾患である.そのため,筋内脂肪織の増減の解析を行うことで,上記のALS鑑別において開発された筋の部位別解析技術を適用し,筋の萎縮のスピードを定量化することができる.ここでは,萎縮のスピードを定量化することにより,筋の萎縮速度という新たな指標を考案し,医学的にも有用な全く新しい予後予測を実現する.また,予後の変化において,四肢の筋力低下から進行する古典型と嚥下・呼吸障害からくる球麻痺型があるが,全身の筋の部位別認識により,病型の鑑別も期待でき,精度の高い今までに無い予後予測の実現を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は,骨格筋に関連する解剖学的構造のデータベースの構築と骨格筋認識技術の全身展開と骨格筋の同時自動解析手順の初期技術の開発を行った. まず,骨格筋と骨格に関する解剖学的構造のデータベース(DB)の構築では,109症例のALS症例および筋萎縮を伴う他の疾患であるミオパチー,ニューロパチーおよび変形性頸椎症の画像データを取得した.これらの画像データベースは指定難病であるALSにおいて国内外で類を見ないデータ群であるといえる. これらの画像DBを用い,全身骨格筋の全自動認識技術を開発し,認識された骨格筋の部位別解析とALS特有の画像特徴の抽出技術の開発を行った.全身骨格筋の全自動認識技術では,胸腔形状をもとに,腹腔形状を画像変形技術により推定し,体腔領域を得る.その体腔領域を入力画像から差分することで,全身の表層筋領域を得る.さらに,大腰筋モデルを利用した深部筋認識を行い,全身の骨格筋領域を得た(109症例中75症例で上肢・下肢骨格筋の自動認識に成功).そして,得られた全身骨格筋領域の画像解析技術として,Haralickのテクスチャ特徴を用い,画像特徴の定量的な解析法を初期検討した. この画像解析法に基づき,ここでは上述の画像データベースを用い,ALSと他の筋萎縮を伴う疾患間に統計的な画像特徴に差があるか否かについて手動で入力した筋正解領域を用い,解析を行った.解析対象は,全身を22の領域に区分化した骨格筋領域に対し,支配神経に基づき6つの髄節レベルの断面において解析を行った.39症例を用いた初期解析の結果,深部筋領域では統計的に有意な特徴量が確認できなかったものの,髄節レベルL4~S2では,13特徴のうち7の特徴でALSと他の萎縮を伴う筋疾患の間に統計的に有意な差が確認できた. 以上のように,当初の目標を達成し,初期解析からも良好な結果が得られた
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年である平成29年度では,平成28年度までに得られた結果に基づき,以下の項目について取り組むと同時に,これまでの実験結果の評価,検証を行う.同時に,画像データベース(DB)についても引き続き収集を行い,認識,解析技術の向上および手法の検証に用いる.また,29年度はALS症例における骨格筋の経時変化の特徴抽出にも取り組むため,経時症例の収集も行う. まずは,骨格筋領域内の筋線維と脂肪織の解析である.認識された骨格筋について,区分化された領域内でALS の鑑別に必要なヴォリュームの認識精度が得られているか評価を行う.ここでは,自動認識・抽出手順をCT 画像DBに適用し,抽出性能の検証と手法の改善を行う.上記で確認された部位別骨格筋の認識技術に基づき,実際に骨格筋が存在する領域内を特定し,その骨格筋内に存在する筋線維および脂肪織の自動認識を行う.そして,それらの画像特徴量の量的関係を統計学的解析手法により,両者の相互関係の解析を行う.28年度に手動で入力した筋領域の解析結果(2次元)と上記の自動解析の結果の比較から,ALS特有の画像特徴の自動解析手法を構築する.同時に3次元のテクスチャ特徴解析も進める. そして,上記で達成された筋線維と筋内脂肪織の自動解析技術に基づき,全身CT画像における骨格筋量を正確に計測可能な計算式を算出する.また,筋内脂肪織の経時変化に基づく予後予測の指標を,臨床医の検討・議論により新たに提案する.最後に,これまでの結果について,国際学会および国内学会において発表し,同時に論文発表を行う.これらは工学分野における新たな技術開発となるだけでなく,医学分野においても新たな知見が得られると期待される.特に,全身の筋を計算機で自動解析し,臨床応用に直接結びつける新しい研究結果が得られる計画である.
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Causes of Carryover |
本経費による国外開催の国際会議経費を,該当年度に使わなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度であり,研究報告を海外で開催の国際会議で本経費を活用する計画である.
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[Presentation] Automated analysis of whole skeletal muscle for muscular atrophy detection of ALS in whole-body CT images: preliminary study2017
Author(s)
N.Kamiya, K.Ieda, X.Zhou, M.Yamada, H.Kato, C.Muramatsu, T.Hara, T.Miyoshi, T.Inuzuka, M.Matsuo, and H.Fujita
Organizer
SPIE Medical Imaging 2017
Place of Presentation
Renaissance Orlando at Sea World/Orlando, Florida
Year and Date
2017-02-11 – 2017-02-16
Int'l Joint Research
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