尿中水銀化合物の誘導体化抽出による一斉形態別分析法の開発

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K15374
• Research Institution: Hiroshima University
• Principal Investigator: 長尾 正崇 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 教授 (80227991)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 奈女良 昭 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (30284186)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 産業衛生 / 中毒 / 分析化学

Outline of Annual Research Achievements

本研究では、ガスクロマトグラフ/質量分析計（GC/MS）およびガスクロマトグラフ/水素炎イオン化型検出器（GC/FID）による、尿中水銀化合物の同定・定量分析に至るまでのハイスループット分析法の開発を目的とする。本年度は、前年度に検討して得られた結果を踏まえ、以下の項目について重点的に検討を行った。
１）系統的化学形態別抽出法の検討：テトラエチルほう酸ナトリウムを誘導体化剤と使用した結果、無機水銀と有機水銀（主としてメチル水銀）を分離分析することが可能となった。
２）液液抽出でのスケールダウン：既存の報告では、尿10mL以上が使用されている。水銀分析において要求される検出下限を考慮しながら使用する尿量を減少させていった結果、0.5～1mLまで減少できることが判明した。
３）内部標準物質の検討：通常、内部標準物質として分析対象化合物の安定同位体を使用する。しかし、水銀化合物では、安価な安定同位体が存在しない。種々、入手可能な水銀化合物を探索したところ、プロピル水銀の市販されていることを突き止め、内部標準物質として検討した結果、比較的安価な内部標準物質として使用できることが判明した。
４）バリデーションの検討：尿中無機水銀およびメチル水銀濃度を2.5、25、250ng/mlとした場合の日内間のばらつきを上記プロピル水銀を内部標準物質として使用して検討した結果、0.97～2.75％と良好な再現性が確認できた。
５）固相抽出法の検討：MonoSpinC18での抽出を検討した結果、液液抽出に比べてGCMSでのピーク面積値が小さく、回収率の面で問題のあることが判明した。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

概ね、当初の計画通りの結果が得られている。
固相抽出に関しては、要求される検出下限値は検出できるものの、回収率が芳しくないことから、来年度に改善項目として追加する予定である。

Strategy for Future Research Activity

最終年度は、昨年度までの結果を基にして尿中水銀分析法の確立とともに施設間誤差についても検討を行う予定である。
１）実用的分析法の検証：昨年度までに確立した方法を協力研究員に実施してもらい、実用性などについての検証を行う。
２）固相抽出法の検討：回収率の改善を目的に、固相抽出基剤や誘導体化剤の再検討を行い、尿中水銀分析の際に要求される検出下限値のクリアーを目指す。
３）施設間誤差の検証：現状の尿中水銀分析法では、施設間で誤差の生じることが大きな問題となっているため、確立した方法を複数の施設ならびに複数の研究者の協力を得て、本研究で確立した分析法の再現性などについて検証を加える。