2016 Fiscal Year Research-status Report
生息海域と深度によるメチル水銀の含有量比較と魚食によるリスク評価
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16K15387
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
柿本 幸子 大阪府立公衆衛生研究所, 衛生化学部, 主任研究員 (80291219)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 総水銀 / メチル水銀 / ベニズワイガニ |
Outline of Annual Research Achievements |
微量であっても胎児の神経発達に影響を与えるという報告があったことから、メチル水銀による食品汚染に対する懸念が高まっている。国連環境計画の報告書(UNEP2013)では、水銀の環境動態について、新たな人為的排出が約30%、自然発生が約10%、過去に人為的に排出されて地表に沈着した水銀の再排出・再移動が約60%と報告されている。アジア地域での排出量は全世界の約50%を占め、排出された水銀の一部は、偏西風により日本近海まで到達する。水銀は海洋に生息する微生物によりメチル水銀に代謝され、食物連鎖により魚介類に蓄積する。 食品となる魚類以外の海洋生物にも水銀は含まれている。特に、カニ類は寿命が長く肉食性であることから、重金属の汚染指標として有効性が示唆されており、水銀が蓄積する可能性が高い。我々は、我が国で漁獲され日本人による摂食量も多いベニズワイガニ中のメチル水銀濃度の実態調査を行うこととした。また、一般的な魚類では、総水銀量に占めるメチル水銀量の割合が90%であると報告される一方、クロカジキにおいては大部分がセレン化水銀として存在するともいわれている。ベニズワイガニに含まれる水銀の形態に関する報告が少ないため、総水銀量に占めるメチル水銀量についても検証した。これらの調査に先立ち、総水銀分析法およびメチル水銀分析法の妥当性確認を行った。その結果、両分析法は目標値を達成した。妥当性確認された分析法を用いて実態調査したベニズワイガニ37試料中の6試料がメチル水銀の暫定的規制値(0.3 mg/kg)を超過した。既報のアオガニの数値と比較すると、今回の調査により得られたベニズワイガニ中のメチル水銀濃度は、特に高いものではないと考えられた。総水銀濃度とメチル水銀濃度との関係を検証した結果、ベニズワイガニ中で水銀は概ねメチル水銀の形態で蓄積されていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一年目の計画のうち、研究協力者の小西良昌主任研究員からの情報提供をうけ、試料収集を行った。試料は、ベニズワイガニを選択し、37検体中総水銀およびメチル水銀を分析した。その結果、実態調査したベニズワイガニ37試料中の6試料がメチル水銀の暫定的規制値(0.3 mg/kg)を超過した。既報のアオガニの数値と比較すると、今回の調査により得られたベニズワイガニ中のメチル水銀濃度は、特に高いものではないと考えられた。総水銀濃度とメチル水銀濃度との関係を検証した結果、ベニズワイガニ中で水銀は概ねメチル水銀の形態で蓄積されていることがわかった。 ただ検体数について、海域別に同じサイズで一定数以上確保する事が難しかった。今後、速やかに検体を収集して検討を実施したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、一年目の未実施部分について早急に検討する。セレン含有量については、ベニズワイガニを湿式灰化し、ICP-OESで測定を行う。セレノネインについては、標準品が市販されていないことからクロマグロの血合い肉から精製し、セレノネイン標準品を調製する。
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Causes of Carryover |
一年目予定していた試料を想定通りに収集する事が困難であったため、試料収集及びそれらの分析に要する予算額が残額となった。二年目は、試料収集を更に進め、カニの汚染指標としての有用性を確認する。そのためにも、今年度の繰り越し費用が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
一年目の計画の未実施部分を実施するため、前年度残額予算を執行する。物品費として、生鮮魚介類収集のための費用や消耗品類費用および分析に要する試薬及び消耗品類費用等の支出を予定している。旅費として、研究代表者の国内学会参加費などの支出を予定している。人件費・謝金として英文添削費用、その他として学会誌投稿料の支出を予定している。
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