2017 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌属の質量分析による新たな薬剤耐性遺伝子タイピングの迅速分類法に関する構築
Project/Area Number |
16K15393
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
永沢 善三 国際医療福祉大学, 福岡保健医療学部, 教授 (80706820)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 質量分析計 / MALDI-TOF MS / MALDIバイオタイパー / ClinPro Tools / ESBL産生菌 / CPE産生菌 / クラスター解析 / 菌種特異ピーク |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤耐性菌による院内感染では腸内細菌科細菌を中心としたESBLおよびCPE産生菌の急増が問題となっているため、迅速な検出法が期待されている。そこで、これらの細菌を迅速に同定し、且つESBL産生菌やCPE産生菌を同時に検出できれば早期に抗菌薬適正使用に繋がり臨床治療上、極めて有用と言える。 H28年より継続して収集しているCPE産生菌50株について、作成したLAMP法プライマーを用いて5遺伝子(IMP、VIM、NDM、KPC、OXA)に分類し、この遺伝子タイプ別にMALDI-TOF MSで分類可能か、現在検証しているESBL産生菌の検出法を利用しH30年に向け追加検討を実施する。 ESBL産生菌およびnon-ESBL産生菌である大腸菌についてクラスター解析および特異ピークの検出を実施した。大腸菌のみを使用することで菌種の特異ピークをESBL産生菌の特異ピークと誤検知することなく実施できる。ClinPro ToolsのGenetic Algorithm(GA)およびSupervised Neural Network(SNN)、Quick Classifier(QC)の3種のアルゴリズムによるESBL産生菌およびnon-ESBL産生菌のクラス分類、更には遺伝子型別のクラス分類を実施した結果、QCのDifference Averageにて感度68%、特異度81%の結果が最も高く、遺伝子型別によるクラス分類は各アルゴリズムにおいて不可能であった。 ESBL産生菌の特異ピーク検出について独自開発ソフトを使用し解析した結果、3,488m/z, 5,876m/z付近のピークに特徴が確認された。しかし、ESBL産生菌を明確に分類できる特異ピークではないため、更にH30年に継続してスペクトル波形およびイオン強度等の特徴についてflexAnalysisにより全スペクトル波形を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
菌株収集:H28年度に収集株数が少ない状況であったCPE産生菌を合計50収集した。 薬剤耐性遺伝子による鑑別:設計したLAMP法のプライマーを用いて収集菌株50株のCPE産生菌の遺伝子検査を実施し、5遺伝子(IMP、VIM、NDM、KPC、OXA)に分類した。 MALDI-TOF MSによる波形解析:収集したESBL産生菌およびnon-ESBL産生菌の各50株についてエタノール・ギ酸抽出法を1株あたり二重測定実施し、スペクトル波形を取得した。取得した波形はflexAnalysisソフトウェアおよびClinPro Toolsソフトウェアを用いてピークデータを収集し、有意に異なるピークの抽出を実施した。 ClinPro Tools解析ソフトによるクラスター分類:収集したESBL産生菌およびnon-ESBL産生菌のスペクトル波形を用いてクラスター解析を実施した。更にGA、SNN、QCの3つのアルゴリズムを用いてESBL産生菌とnon-ESBL産生菌の最適なアルゴリズムを作成し、ESBL産生菌のクラス分類を実施した。 独自開発ソフトによるESBL産生菌特異ピークの検出:Excelソフトのマクロ処理により独自に作成した疫学解析ツールを用いて、ESBL産生菌とnon-ESBL産生菌の識別可能なピークを検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
菌株収集:大腸菌以外の腸内細菌科細菌でのESBL産生菌やAmpC産生菌、メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌について継続して収集を実施する。 ESBL産生菌の波形確認:独自開発ソフトにてESBL産生菌の特異ピークと思われる質量付近のスペクトル波形を確認すると共に、波形形状およびイオン強度を確認し明確にESBL産生菌を分類できるピークあるいはピークパターンを選別する。 MALDI-TOF MSによる波形解析:CPE産生菌および菌株収集している大腸菌以外のESBL産生菌やAmpC産生菌、メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌について、エタノール・ギ酸抽出法を実施し、MALDI Biotyperにてスペクトル波形を2回以上取得する。 ClinPro Tools解析ソフト等によるクラスター分類:収集したCPE産生菌および菌株収集している大腸菌以外のESBL産生菌やAmpC産生菌、メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌のスペクトル波形を用いてクラスター解析を実施する。この際、各薬剤耐性菌が作成されるアルゴリズムにより分類可能かを検証する。また各種薬剤耐性菌の特異ピークを独自開発ソフトにより検出を試みる。
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Causes of Carryover |
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌の菌株収集が予定より少なかったため、遺伝子検査実施件数が少なくなり、残金が生じた。平成30年度は近隣の施設からも菌株収集を行い、予定された菌株の遺伝子解析を実施する予定である。
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