2016 Fiscal Year Research-status Report
メタボローム分析による高齢者寝たきり予防の基盤となる新規老化関連メタボライト探索
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16K15412
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 祥司 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80402890)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタボライト |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、高齢者(老化)の多様性を規定する因子として、代謝特性に注目している。その理由は、カロリー制限やミトコンドリア酸化ストレス軽減による寿命延長という基礎研究での知見に基ずく。ヒト血液メタボロームにおいて、我々は独自に赤血球メタボローム解析の手法を確立した。その手法を用いて、分裂酵母メタボライトと比較検討した結果、80%以上が保存されており、進化上メタボライトも保存されていることが判明し、報告した(ロマス他MolBiosys2014)。さらにこの血液・赤血球メタボローム解析を用いて、30名の健常者の解析を行った。30名のサンプルで、126個のメタボライトに関し、その個人差バラつきをCV値で検定した。その結果、メタボライトには、個人差の少ないものと大きなものの2群に大きく分かれることが判明した。前者には生育に必須なメタボライトが数多く含まれていた。最後にヒト若年(15名、平均20歳代)・高齢群(15名、平均80歳代)の血液メタボローム比較し、14個の老化マーカーの同定に成功した。そのうち、3個は既報があり、残りの11個は、我々による新規報告であった。14個のうち、6個は赤血球に豊富なメタボライトであり、我々のアプローチの重要性が再確認できた。興味深いことに、これら14個の老化関連メタボライトは、相関係数解析により、大きく二つのグループに分かれることが見いだされた。このような高齢者特有のメタボライトは、年齢以外に、食生活、生活様式、健康状態、環境要因などを反映すると推測される(ハレキツ他 PNAS 2016, 近藤,柳田PNAS 2016)。これらの成果は、代謝の観点からの独創的な老化研究として国内外で評価され、いくつかの招待講演でも発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、メタボローム解析をヒト血液で開始するにあたり、メタボライトの不安定さが問題となった。我々は、正確な測定法の確立が急務と判断し、様々な条件検討を行ってきた。その結果、患者の採血したその場で遠心せずに、全血液を急速凍結する方法が、非常に有効であることに気付いた。この方法で、安定して計測できるようになり、今回の老化マーカーの新規発見につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が独自に確立した血液メタボローム解析方法を利用し、今後さらに老化研究への応用を推し進める。現在、フレイルの患者とそうでない患者の比較検討を徐々に開始している。京大病院内の倫理員会も承認済みであり、順調に進めている。
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Research Products
(7 results)