2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K15427
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
妹尾 浩 京都大学, 医学研究科, 教授 (90335266)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 癌 / 大腸 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタロプロテアーゼNardilysin (Nrd1)は、ADAMプロテアーゼの活性を介して、TNF-α、EGFファミリーを活性化する。さらにNrd1は、核内でNCoR/SMRT複合体と協調してHDAC活性、転写を直接制御する。本研究では、細胞の「内と外」で複数の因子を一括して制御するNrd1が大腸癌で果たす役割を、以下の様に検討した。 1.癌微小環境でNrd1が活性化するサイトカイン・増殖因子ネットワークの解明:Nrd1 KOマウスではほとんど腫瘍が生じないため、本申請に先立って作出したNrd1トランスジェニックマウスを用い、AOM/DSS投与およびApcMinマウスとの交配により、マウス腸腫瘍におけるNrd1の有無による種々の蛋白のシェディングを解析した。その結果、Nrd1過剰発現により、TNF-αのシェディングはマウス腫瘍局所でも顕著に亢進していた。さらに、Nrd1 KOマウスで示された顕著な抗腫瘍効果の主体が上皮か間質かを決定するために、Nrd1 floxed KOマウスと、Villin-cre、LysM-cre等のcreマウスの交配を進めた。 2.核内でのNrd1によるヒストン修飾を中心とする転写制御機構の解明:Nrd1はマウス腸腫瘍およびヒト大腸癌細胞の核内にも存在し、in situ PLA法でHDAC1および3などのクラスI HDACと共在することを確認した。ヒト大腸癌細胞株においても、Nrd1とクラスI HDACが共在することを、FLAG-Nrd1を用いた免疫沈降法で確認できた。また、種々のクラスI HDAC活性をヒト大腸癌細胞株を用いて検討したところ、Nrd1のノックダウンにより一部のクラスI HDAC活性が変動することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.癌微小環境でNrd1が活性化するサイトカイン・増殖因子ネットワークの解明:Nrd1/ADAMの標的は、TNF-α以外の炎症性サイトカインやEGFファミリーなど多岐にわたる。本研究ではより広い視点から、サイトカイン・増殖因子の活性化、ネットワークを遺伝子、蛋白レベルで包括的に検討することを予定した。まずNrd1トランスジェニックマウスを用い、AOM/DSS投与およびApcMinマウスとの交配により、マウス腸腫瘍におけるNrd1の有無による種々の蛋白のシェディングを解析することができた。さらに、Nrd1 floxed KOマウスとVillin-cre、LysM-cre等のcreマウスとの交配は順調に進捗した。 2.核内でのNrd1によるヒストン修飾を中心とする転写制御機構の解明:Nrd1はマウス腸腫瘍およびヒト大腸癌細胞の核内にも存在し、in situ PLA法でHDAC1および3などのクラスI HDACと共在していた。クラスI HDAC阻害剤は次世代の癌治療薬のひとつとして、すでに多くの臨床試験が行われているため、本研究ではNrd1がNCoR/SMRT複合体を介して、クラスI HDAC活性に及ぼす影響を検証した。その結果、ヒト大腸癌細胞株において、Nrd1とクラスI HDACの共在をFLAG-Nrd1を用いた免疫沈降法で確認し、ヒト大腸癌細胞株を用いたノックダウンによりクラスI HDAC活性の変動を示すことができた。 以上より、当初の予定にしたがって、おおむね順調に研究は進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.癌微小環境でNrd1が活性化するサイトカイン・増殖因子ネットワークの解明:2016年度の解析に引き続き、サイトカイン・増殖因子のネットワークが大腸癌の進展に与える影響を検討するために、Nrd1トランスジェニックマウスに加えて、Nrd1 floxed KOマウスとVillin-cre、LysM-cre等のcreマウスとの複合変異マウスを用いて、AOM/DSS投与による炎症性腸腫瘍形成を検討する。また、ApcMinマウスとの交配も行い、非炎症環境下での腸腫瘍形成に及ぼすNrd1の影響を解析する。さらに、腸腫瘍局所におけるサイトカイン・増殖因子のネットワークを解析するため、網羅的発現解析を行い、Nrd1の有無による活性化シグナルの差異を明らかにする。 2.核内でのNrd1によるヒストン修飾を中心とする転写制御機構の解明:Nrd1とクラスI HDACよって制御される核内転写の動態を解析する。Nrd1トランスジェニックマウスの腸腫瘍、およびNrd1ノックダウンを行ったヒト大腸癌細胞株を用いて、HDAC阻害を組み合わせて、Nrd1下流の遺伝子発現の変動を解析する。また、それにより明らかとなった因子のうち、とくに腫瘍進展に影響を及ぼす候補因子については、クロマチン免疫沈降によって、Nrd1のプロモーター領域への結合を確認する。 今後は、Nrd1を中心とした多岐にわたるサイトカイン・増殖因子ネットワークの活性化機構を明らかにし、ヒストン修飾を中心とするNrd1の核内転写制御機構も含めて、Nrd1が大腸癌進展をもたらすメカニズムを学術的に探究する。それに加えて、Nrd1のもつ空間的、機能的多面性を明らかにし、ヒト大腸癌に対する個別化医療への展開も視野にいれ、新規の大腸癌治療法開発に直結するシーズとしてのNrd1の可能性を検証したい。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Pathogenicity of IgG in patients with IgG4-related disease.2016
Author(s)
Shiokawa M, Kodama Y, Kuriyama K, Yoshimura K, Tomono T, Morita T, Kakiuchi N, Matsumori T, Mima A, Nishikawa Y, Ueda T, Tsuda M, Yamauchi Y, Minami R, Sakuma Y, Ota Y, Maruno T, Kurita A, Sawai Y, Tsuji Y, Uza N, Matsumura K, Watanabe T, Notohara K, Tsuruyama T, Seno H, Chiba T.
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Journal Title
GUT
Volume: 65
Pages: 1322-1332
DOI
Peer Reviewed
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