2016 Fiscal Year Research-status Report
放射線障害の克服による肝細胞癌に対する放射線治療の適応拡大
Project/Area Number |
16K15430
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
巽 智秀 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20397699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪森 亮太郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10644685)
疋田 隼人 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20623044)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線肝障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝悪性腫瘍における放射線治療は、これまで肝臓の放射線耐用性の低さから限られたものとなっていたが、定位放射線療法(SBRT:stereotactic body radiation therapy)の登場により、正常肝への照射を少なくし腫瘍に限局して放射線照射することが可能となり、その適応範囲は拡大してきている。一方で、放射線による肝臓障害の予防法はなく照射線量自体を制限することでその影響を抑えるのみにとどまっている。今回我々は、放射線が肝臓に与える影響を肝再生能という指標を用いて評価を行うこととした。まず、マウスに対し10Gyの体幹部限局照射を行った。体幹部限局照射マウスモデルにおいて肝臓の全葉において放射線によるDNA障害が起きていることが確認でき、なおかつ、全身照射マウスでは不可能であった高容量の放射線照射においても長期の生存が可能であった。 次にC57BL/6Jマウスにおいて10Gy放射線照射群と非放射線照射群における肝再生能の評価を行った。C57BL/6Jマウスに対し体幹部限局放射線照射を行い、さらに照射肝に対し肝部分切除術を施行した。照射肝における肝再生は非照射肝に比し、肝再生能は遅延することが確認された。照射肝においては肝再生時に非照射肝に比しKi67 陽性細胞、PCNA陽性細胞の低下していた。照射肝においてはp53およびその下流であるp21が非照射肝よりも上昇しており、p21の上昇に伴うcell cycle arrestが肝再生の遅延を招いていることが示唆された。 そこで、肝細胞特異的p53欠損マウスにおける放射線照射時のp21の発現について検討した。p53欠損マウスに対し体幹部限局放射線照射を施行すると、野生型マウスと比し肝臓におけるp21の上昇は減少することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高容量の放射線照射マウスモデルの作成に成功しており、同モデルを用いることで肝臓における放射線照射の影響についてin vitroでの解析が可能となった。また、放射線照射がマウスの肝再生能に与える影響も確認することができた。以上より本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の結果をもとに、以下の検討を行う予定である。 1)放射線照射後の肝再生遅延に対する細胞老化の抑制効果:野生型マウスで認められた放射線照射に伴う肝再生能の低下が、放射線照射によるp53・p21の上昇に起因する細胞老化が関与している可能性を考えられた。そこで放射線照射によるp21の上昇が抑制される肝細胞特異的p53欠損マウスに対し、放射線照射後に肝部分切除術を施行し、肝重量の回復について評価を行う。さらに、ウエスタンプロットやリアルタイムPCRで細胞周期関連蛋白の発現等についても検討し、放射線照射による肝再生能低下を改善する因子について検討する。 2)細胞老化に起因する因子のスクリーニング(in vitro):初代培養肝細胞株や星細胞株を用いて射線照射後の細胞周期関連蛋白の発現について調べ、野生型マウスですでに認められている肝再生能の変化に寄与する因子についてさらなる検討を行う。
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