2016 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of molecular mechanisms of angiogenesis inhibitory function of heart interstitial cell-derived factor
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16K15449
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
松浦 勝久 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70433993)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心臓線維芽細胞 / 血管新生 / 心筋梗塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、まず個体の発生から成熟過程での心臓におけるFactorXの発現の解析を行った。E15.5、E18.5、生後2日、2週齢、8週齢ラット心臓におけるFactorXの発現を定量的RT-PCRにて解析を行ったところ、この5群間では、2週齢ラット心臓でのFactorX発現が有意に高かったものの、血管新生が豊富な皮膚での発現と比較すると、いずれの段階での心臓におけるFactorXの発現は極めて高いことが明らかとなった。また生後2日目および8週齢ラット各々の心臓および皮膚(真皮層)より、線維芽細胞を単離し、新生仔ラット心臓由来CD31陽性血管内皮細胞と共培養を行ったところ、いずれの時期においても、心臓由来線維芽細胞は血管内皮細胞のネットワーク形成を著しく抑制することが明らかとなり、心臓線維芽細胞は、出生直後から成体に至るまで、FactorXの高発現を介して血管新生に対し抑制的に作用していると考えられる。 次に、心筋梗塞モデルラット心臓におけるFactorXの発現を経時的に評価した。健常状態に比して、心筋梗塞後1日目の心臓では、正常皮膚と同等程度にFactorXの発現が一過性に有意に低下したものの、梗塞4日目および8日目には、再度上昇し、健常状態心臓と同等にFactorXの発現が観察された。このことは、FactorX抑制を介した、虚血に対する心臓の自己修復機構が十分でないことを示すものと考えられる。 FactorX発現の性差について、成体ラット心臓を用いて定量RT-PCRを行い検討したところ、雌ラット心臓で有意にFactorXの発現の上昇が観察されたが、いずれも皮膚組織に比して極めて高いものであったため、心臓線維芽細胞は性差なくFactorXを高発現し、血管新生に抑制的に作用することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画として挙げた1)発生から成熟過程における心臓でのFactorX発現・局在解析と心臓線維芽細胞の抗血管新生機能評価、2)心筋梗塞後心臓におけるFactorX発現。局在解析と心臓線維芽細胞の抗血管新生機能評価、3)心臓のFactorXの発現性差評価と分子機序解明、に関してはほぼ研究が遂行され、1)に関しては、発生段階から成熟段階までFactorXが心臓で高発現して血管新生に抑制的に作用していること、2)に関しては、心筋梗塞後に一過性に心臓でのFactorXの発現が低下するものの、速やかに元の高発現レベルに回復することが明らかとなり、結果血管新生に対する抑制的な作用が虚血環境下でも維持されること、3)に関しては、心臓でのFactorXの発現に性差はあるものの、血管新生が豊富な皮膚に比してはいずれも高発現していることから、性差なく心臓線維芽細胞が血管新生に抑制的に作用しうることを見出していることから、順調に研究が進捗しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、主にFactorX発現抑制による心筋梗塞に対する血管新生治療開発を行う予定である。当初の研究計画では、FactorX shアデノウイルスベクターを作製し、心臓に感染させることでFactorXを抑制し、心筋梗塞後の血管新生に対する作用を検討する予定であったが、感染効率に個体差が生じやすいために、心筋梗塞後の血管新生の検討結果も個体差が生じやすいことが懸念されたために、平成28年度よりCRISPR/Cas9を用いたFactorXの遺伝子欠損ラットの作製に着手し、平成28年度末にホモ欠損ラットの作製に成功した。現在ホモ欠損ラットの繁殖中であり、十分量のラットが確保でき次第、心筋梗塞を作成し、血管新生能および心機能に及ぼす影響について検討を進める予定である。一方で、遺伝子欠損ラットは、発生段階からFactorXの発現が抑制されていることから、代償的な機構により、FactorX発現は抑制されていても、血管新生能の回復が認められない可能性も考えられる。平成28年度に行った検討において、ラット心臓線維芽細胞をFactorXに対する抗体で前処置した後に血管内皮細胞と共培養すると、コントロールIgG抗体を添加したサンプルに比して有意に血管内皮細胞のネットワーク形成が認められたため、抗体によるFactorXの抑制が心臓線維芽細胞の血管新生抑制効果に対し有効であることが明らかとなっている。したがってFactorXに対する抗体を前投与した野生型ラットに対し心筋梗塞を作成することで、一過性のFactorX抑制による血管新生能および心機能へ及ぼす効果を、コントロールIgG抗体を投与した群と比較検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当初、FactorXの心臓での発現に性差が存在すれば、雄雌ラット心臓より線維芽細胞を単離し血管内皮細胞と共培養することで、血管新生能に対する機能を評価する予定であったが、雄雌ともに、血管新生が豊富な皮膚組織より有意に発現の上昇が認められたことを踏まえ、FactorXを介した血管新生能には性差は少ないと結論付けることが可能となったため、共培養実験を行う必用がなくなり、当初より予算使用額が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には、FactorXの抗体投与による心筋梗塞に対する血管新生能について検討する予定であり、その抗体購入費用に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)