2016 Fiscal Year Research-status Report
II型肺胞上皮細胞の脂肪酸組成変化による肺線維化発症機構の解明
Project/Area Number |
16K15456
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
倉林 正彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00215047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前野 敏孝 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (00436297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺線維化 / 肺胞上皮 / 脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
II型肺胞上皮細胞は自己再生するとともに、I型肺胞上皮細胞に分化する能力ももつことから、II型肺胞上皮細胞は、肺幹細胞である。私たちは、サーファクタント合成が活発なII型肺胞上皮細胞に着目して、II型肺胞上皮細胞における脂肪酸代謝の異常が病態形成にどのように関係するか解析した。その結果、特発性肺線維症患者 (IPF)のII型肺胞上皮細胞においてElovl6の発現が減少していること、Elovl6欠損マウスの肺ではパルミチン酸やステアリン酸などの飽和脂肪酸優位の組成に変化しており、この組成の変化が酸化ストレスやアポトーシスを誘導して肺線維症の増悪に寄与する可能性を見出した。また、Elovl6欠損マウスの肺組織では肺胞径の著明な拡大や弾性線維の破壊を認め、生下時から肺気腫を呈していることを観察した。さらに、Elovl6欠損マウスの肺組織において、KLF4の発現が著明に低下することを観察した。KLF4の発現低下は、肺気腫標本におけるII型肺胞上皮細胞においても確認され、それに伴ってアポトーシスが誘導されること、および、肺線維症マウスの肺組織ではKLF4の発現が増加することを見出した 。 これらの結果は、II型肺胞上皮細胞における脂肪酸組成の変化は、KLF4の発現を増減させ、それに伴ってII型肺胞上皮細胞の分化度や細胞死に影響することで、肺線維症、肺気腫の病態形成に重要な役割を持つ可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Elovl6欠損マウスのin vivoでの解析はほぼ順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
次の2点の検討を進める 1.AMPK のリン酸化がKLF4 発現を誘導する機序の解析 KLF4 の発現調節機構はこれまでほとんど明らかにされていない。AMPK を活性化するAICA を添加し、mRNA および蛋白レベルでKLF4 の発現を調べる。また、AMPK 活性化阻害剤(compound C)がElovl6 欠損細胞あるいはElovl6 ノックダウン細胞でのKLF4 発現誘導を抑制するか否かを検討する。 2.Elovl6 欠損が血管平滑筋細胞の形質変換機序の解析 Elovl6 欠損は、小胞体(ER)ストレスを介して、血管平滑筋細胞の形質変換を誘導するという仮説を検証する。PERK, IRE1,ATF6, BiP, eIF2a,Chop, ATF4の発現を検討する。これらの発現が増加していれば、Elovl6 欠損はUPRUPR(unfolded protein reaction)シグナル経路を活性化するといえる。
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