2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞老化と細胞骨格調節機構から紐解く肺線維症発症機序の解明
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16K15460
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
中里 雅光 宮崎大学, 医学部, 教授 (10180267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳 重久 宮崎大学, 医学部, 助教 (60404422)
坪内 拡伸 宮崎大学, 医学部, 助教 (60573988)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺線維症 肺リモデリング / 細胞老化 / 細胞骨格 / Pten / RhoA / Ror2 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)は原因不明の肺リモデリング疾患で、進行性の呼吸不全を来し、生存期間中央値2.5年と予後不良である。IPFの病態解明と有効な治療法の開発は急務の医療課題であると考えられる。本研究では、肺胞上皮細胞(AEC)特異的Pten欠損マウスを用い、上皮PTENが与える細胞老化と肺線維症発症・進展の関連を検証した。酸性βガラクトシダーゼ活性(SA-βGAL)染色の結果、30週齢のAEC特異的Pten欠損マウスは、AECでの老化細胞が有意に増加していた。また、AEC特異的Pten欠損マウスでは、細胞老化の特性であるsenescence-associated secretory phenotype(SASP)を示唆する気管支肺胞洗浄液中総細胞数の増多がみられた。さらに、30週齢のAEC特異的Pten欠損マウスでは、肺リモデリングを示唆する平均肺胞径と肺胞破壊指数の増加がみられた。Pten-siRNAを導入したヒト不死化肺上皮細胞株(BEAS-2B)では、MMTアッセイでの増殖能低下がみられた。以上から、上皮Ptenの欠損は細胞老化の加速、細胞増殖能の低下、SASPを惹起し、肺リモデリング亢進を引き起こすことが示唆された。本年度は、Wnt5a-Rorシグナル解析のためにRor2floxマウスを神戸大学細胞生理学分野より、RhoA-ROCKシグナル解析のためにRhoAfloxマウスを和歌山県立医科大学分子医学研究部より導入した。現在、肺上皮細胞特異的Ror2欠損マウス、肺上皮細胞特異的RhoA欠損マウスを作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、1. AEC特異的Pten欠損マウスを用いたAEC細胞老化の解析、2. AEC特異的Pten欠損マウスでの肺線維症自然発症の解析ならびに3. Pten ノックダウン肺上皮細胞での細胞老化シグナル解析について、AEC特異的Pten欠損マウスとコントロールマウス、ならびにPten-siRNA遺伝子導入ヒト肺上皮細胞株を用いて解析を行った。その結果、上皮Ptenの欠損は、細胞増殖停止とSASPからなる細胞老化の加速、高齢期における肺リモデリング亢進を生じることを見出した。さらに本年度はWnt5a-Ror経路解析のために神戸大学細胞生理学分野と、RhoA-ROCKシグナル解析のために和歌山県立医科大学分子医学研究部、Cincinnati Children’s Hospital Medical Centerと共同研究を開始し、肺上皮細胞特異的Ror2欠損マウス、肺上皮細胞特異的RhoA欠損マウスの作成を開始した。以上の研究成果から、本研究課題の解明について当初の計画以上に進展しているもの考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の結果、肺上皮Ptenは細胞老化を制御することにより肺リモデリング疾患の病態制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。今後は上皮Ptenの肺リモデリング疾患病態への病態生理学的意義をさらに解明するため、肺上皮Ptenが与える細胞骨格調節機構への影響を解析する。Pten ノックダウン肺上皮細胞を用い、創傷修復能を解析する。細胞骨格の経時的変化をシリコンローダミンプローブを用いた細胞骨格生細胞イメージングにて解析する。細胞骨格調節蛋白発現変化をウエスタンブロッティングにて測定する。AEC特異的Pten欠損マウスを用い、細胞老化関連シグナル分子の発現動態について、単離AECでのp53, p16Ink4a, p21, p19ARF発現をウエスタンブロッティングと定量RT-PCRにて測定する。肺上皮細胞特異的Ror2欠損マウスと肺上皮細胞特異的RhoA欠損マウスを用い、肺線維症の自然発症の有無、細胞外マトリックス蓄積、AEC細胞骨格変化を解析する。基底膜へのAECの接着とAEC間連結について電子顕微鏡にて解析する。
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Causes of Carryover |
28年度に予定していた遺伝子組換えマウスの導入が、動物実験施設の事情等により延期となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子組換え動物の導入に使用を予定している。該当する遺伝子組換え動物の遺伝子組換え実験計画書、動物実験計画書はいずれも28年度に承認済みである。
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Research Products
(4 results)