2016 Fiscal Year Annual Research Report
Visualization of small metabolites in the kidney for elucidation of pathophysiology of ischemic nephropathy
Project/Area Number |
16K15471
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40252457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 亜紀子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (50455573)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 質量分析イメージング / 代謝産物可視化 / 急性腎不全 / 腎虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は、組織内の低分子量代謝産物を可視化する新しい研究手法である、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法によるマスイメージング(MALDI-IMS)を用いて、解糖系からATP産生に至る代謝産物(メタボライト)ひとつひとつを可視化してきた。そして腎臓における主要な生理活性物質であるアデノシンが、腎皮髄境界に特異的に集積していることを発見した。アデノシンは生体のエネルギー担体であるATPの分解産物であり、アデノシン受容体を介して濃度依存性に腎細動脈の収縮・拡張を制御する。腎臓には急性虚血に応答する血流自動調節機構が存在するが、虚血腎の血流維持におけるアデノシンの意義は解明されていない。そこで我々は、腎動脈クリッピングによる一過性の腎虚血モデル(最大10分の完全虚血)を用いて、虚血腎におけるアデノシン分布の変化と、虚血腎での腎血流維持におけるアデノシンの意義を検討した。腎動脈クリッピングによる1分間の急性虚血にて、皮髄境界におけるアデノシン集積が消失した一方で、皮髄境界以外の腎髄質・皮質ではアデノシンが増加した。次に、マウス眼窩底からの脱血による急性腎前性腎不全モデルを作成し、アデノシンの虚血腎における意義を検討した。脱血後、レーザー血流計にて腎血流、ウエスタンブロット法にて血管緊張度の指標となるミオシン軽鎖リン酸化を評価した。脱血にて、血圧と腎血流はおよそ60%低下し、腎臓全体でのミオシン軽鎖リン酸化は30%減弱した。すなわち、脱血に伴う還流低下に応じて、腎内の血管は拡張すると考えられた。低親和性受容体であるアデノシンA2受容体阻害薬の投与後に脱血を行うとミオシン軽鎖リン酸化は減弱せず、腎血流の低下が顕著となった。これらの結果より、アデノシンはA2受容体を介して腎血管を拡張し、脱血時の腎血流維持に関与すると考えられた。
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