2016 Fiscal Year Research-status Report
造血細胞における癌抑制遺伝子BCORの分子機能の解明
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16K15498
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岩間 厚志 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70244126)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | BCOR / 急性Tリンパ芽球性白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bcor(BCL-6 corepressor)はその名の通りBcl6のコリプレッサーとして同定され、のちにPcgf1を含むPRC1.1の構成因子としても機能することが明らかとなった。また、近年の大規模シーケンス解析から再生不良性貧血、急性骨髄性白血病、骨髄異形性症候群など種々の造血器腫瘍においてBCOR遺伝子の機能喪失型変異が同定されている。そこで、申請者らは2種類のBcor遺伝子変異マウス(タモキシフェン誘導により造血特異的にBcl6との結合ドメインを欠損するBcorE4欠損マウス)を用いて造血におけるBcor遺伝子の機能を解析した。興味深いことに、BcorE4欠損マウスは300日までに約半数が急性Tリンパ芽球性白血病 (T-ALL) を発症することが明らかになった。T-ALL腫瘍細胞の遺伝子発現解析を行ったところ、T-ALLにおける重要なNotch標的遺伝子として知られるc-Myc、さらにはc-Myc標的遺伝子群の発現が亢進していることが明らかとなった。BcorはCD4+CD8+胸腺T前駆細胞においてc-Mycプロモーターに結合すること、Bcl6遺伝子欠損胸腺細胞も類似の遺伝子発現プロファイルを示すことから、BcorはBcl6と協調してc-MycをはじめとしたNotch標的遺伝子の発現を抑制的に制御することで、がん抑制遺伝子として機能していることが明らかとなった。今後はそのがん抑制遺伝子としての機能をタモキシフェン誘導により造血特異的にPcgf1との結合ドメインを欠損するBcorE9-10欠損マウスを用いて確認・検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、Bcorの遺伝子欠損マウスの解析を通して、造血におけるBCORによるエピジェネティック制御の詳細を明らかにする。さらにはその機能破綻が造血器疾患発症にどのようにつながるのかを解明することを目的とする。予想通りにBcor欠損マウスにおいて造血器腫瘍が発症し、そのがん抑制遺伝子としての機能を確認できた。そのがん抑制遺伝子としての機能をさらに明らかにすることが、造血器腫瘍発症機構の理解を進めるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はタモキシフェン誘導により造血特異的にPcgf1との結合ドメインを欠損するBcorE9-10欠損マウスを用いて造血におけるBcor遺伝子の機能を解析する予定である。興味深いことに、T-ALLの発症はPcgf1との結合ドメインを欠いたBcorE9-10欠損マウスに関しても同様に観察されつつある。しかしながら、BcorE9-10欠損マウスはBcorE4欠損マウスと異なり骨髄球分化・増殖の増強が観察され、T-ALLより頻度は低いものの骨髄球系腫瘍の発症も観察されていることから、骨髄球系造血腫瘍に見られるBCOR変異のモデルマウスとして解析を進めている。
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