2016 Fiscal Year Research-status Report
Manipulation of pathogenic memory T cells for development of novel treatment for food allergy
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16K15524
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
前川 洋一 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10294670)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アレルギー / 免疫記憶 / メモリーT細胞 / Notchシグナル / 病原性メモリー |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちの知見である「NotchシグナルによるメモリーCD4T細胞の維持機構」を基盤として、食物アレルギーの病態に深く関わっている病原性メモリーT細胞を選択的に除去する根治療法を確立することである。 1)メモリーCD4T細胞のNotchシグナルを阻害することでメモリーCD4T細胞を除去する実験を行った。感作1ヶ月後にNotchシグナル阻害剤を投与し、その後アレルゲン経口投与により食物アレルギー発症を誘導したところ、対照群と比較して下痢の発症で60%、アナフィラキシーショック死を100%抑制した。この結果は、Notchシグナル阻害によって食物アレルギーの発症を軽減あるいは抑制できる可能性を示唆するものである。 2)I型アレルギーにはIgEがその病態に深く関与している。IgE陽性メモリーB細胞は存在せず、高原再暴露の際にIgG陽性メモリーB細胞からクラス変換によりIgE産生形質細胞に分化する。クラス変換と形質細胞への分化には抗原特異的病原性メモリーT細胞が必要である。そこで、私たちの用いている食物アレルギーモデルでも誘導相にアレルゲン特異的病原性メモリーCD4T細胞が関与しているか否かを検討した。感作1ヶ月後に抗CD4抗体投与しその後アレルゲンを投与したところ、対照群と同等以上に発症した。抗体によるCD4T細胞除去が不完全であることを疑い検討したところ、CD4T細胞が残存していることがわかった。しかし、残存しているCD4T細胞は全てメモリー様細胞であり、未感作CD4T細胞は存在しなかった。私たちは抗体による除去に抵抗性のメモリー様CD4T細胞がアレルギーの発症と強く連関する病原性メモリーCD4T細胞ではないかと想定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Notchシグナルの阻害により食物アレルギーの発症や症状の軽減が認められた。このことは当初計画の想定内である。しかし、Notchシグナル阻害では病態と関連するメモリーT細胞のみを選択的に除去することは現実的ではない。 一方、私たちが期せずして見出した抗体除去抵抗性メモリー様CD4T細胞には病態を関連する細胞が含まれている。この細胞の性状や特異的マーカー分子を見出すことでより安全で有効な選択的病原性メモリーT細胞の除去法の確立につながるのではないかと考え、当初の計画以上に、あるいは想定外に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1,Notchシグナル阻害によるアレルギー再発阻止を想定した治療法の可能性 Notchシグナル阻害によるアレルギー再発阻止を想定した治療法の可能性について引き続き検討していく。問題点として、1)現在までに安全で有効なNotchシグナル阻害剤は開発されていないこと、2)抗原特異性を出せないこと、が挙げられる。この点を解決するために、当初計画していた抗原特異的CRISPR/Cas9リポソームについて継続研究する。 2,抗体媒介除去抵抗性メモリー様CD4T細胞の性状解析 生体内で抗体が媒介する細胞除去には補体系が関与する。したがって、抗体投与による細胞除去に抵抗性のメモリー様CD4T細胞は特別な補体抵抗性を有していることが想像される。この特性はがん幹細胞でも認められるため、私たちが見出した補体抵抗性メモリー様CD4T細胞はCD4Tメモリー幹細胞の可能性がある。また、補体抵抗性メモリー様CD4T細胞が食物アレルギーの発症にも関わっていることが想定されるため、この細胞集団は病原性CD4Tメモリー幹細胞と考えることができる。今後はこの細胞集団の性状を解析することで、様々な難治性免疫疾患の病原性CD4Tメモリー幹細胞を同定し治療標的とすることができるのではないかと考える。細胞を分取し試験管内での応答を検討するとともに、各種移入実験を行うことでこの細胞集団の免疫学的な特性を明らかにしていく。また、遺伝子発現や代謝などのオミックス解析を実施し、この細胞集団に特異的なマーカー分子や治療標的となる分子及び代謝系を見出す。
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Research Products
(2 results)