2017 Fiscal Year Research-status Report
学校調査に基づくいじめ被害生徒のメンタルヘルスー自殺念慮を中心にー
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16K15558
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
武井 教使 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (80206937)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | いじめ / 不登校 / 抑うつ / 特別支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
いじめは学齢期の子どものメンタルヘルスや学業成績に及ぼす影響のみならず、成人後の抑うつや不安、自殺念慮等にも影響を及ぼすとして、多くの研究がなされている。わが国でも、いじめが問題視されているが、実際にいじめ被害がメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのか、包括的な科学的研究はなされていない。本申請では、学校をベースに大規模研究な前方視追跡研究を行っている。 前年度の調査において、調査前1ヶ月間の欠席3日・遅刻2日・早退2日以上(いずれも1SD以上)のいずれかに該当するケースを「登校不安定」群とした時、いじめ被害を受けたと回答した児童生徒が登校不安定群である確率が高いことが分かった。今年度は、いじめ被害と不登校傾向の因果関係を調べるため、前年度からの経年調査を行った304名について、平成28年度の年間欠席日数、年間遅刻日数、年間早退日数といじめ被害・加害が関連しているかどうかを調べた。平成28年度の年間欠席日数は、平均6.3日(SD=24.9)であった。遅刻は平均1.6日(SD=8.1)、早退は平均0.6日(SD=2.9)であった。いずれの変数もゼロが大多数を占め、過分散であったため、負の二項回帰モデルを用いて解析を行った。その結果、いじめ被害経験がある場合、欠席日数の発生率のリスクが増加した(incidence rate ratio, IRR = 2.31, p = 0.04)。子どもの強さと困難さアンケート(保護者記入)のtotal difficulty scoreで示される特別なニーズの必要性がある場合、抑うつスコア(DSRS-C短縮版)が高い場合にも、欠席日数の発生リスクは増加した(それぞれ、IRR = 6.13, p = 0.02; IRR = 1.15, p = 0.01)。年間遅刻・早退日数については、いずれの変数とも有意な関連はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査対象は当初の予定より縮小となり、質問項目についても学校現場からの要望を取り入れて一部縮小となったが、概ね当初の計画通り進行している。データの整備と論文化についてはやや遅れており、今後は論文化に向けて結果をまとめていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
3年間の追跡調査が終了し、いじめや不登校傾向と、それらに関連する抑うつ、特別な支援の必要性、学校風土に対する感じ方等の要因についても調査することができた。今後はこれら3年間のデータの紐づけを行い、データのクリーニングと解析、論文化を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
調査実施対象者が当初予定していたより少なかったこと、学会発表等に時間を割くことが出来なかったこと等により、人件費、旅費等に差額が生じた。今年度は、論文作成、学会発表等に予算を使用することを計画している。
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