2016 Fiscal Year Research-status Report
放射線による着色を利用した硼素中性子捕捉療法用照射場のビームプロファイル測定手法
Project/Area Number |
16K15578
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
櫻井 良憲 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (20273534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 卓志 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (60444478)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 硼素中性子捕捉療法(BNCT) / ビームプロファイル / 放射線着色 / 粒子線治療 / 放射線計測 / 品質保証/品質管理(QA/QC) / 医学物理 / 放射線工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、放射線着色物質を混入する母材の選定を行った。本研究では、着色物質の種類や混入割合を頻繁に変える必用があることから、母材は水に近いゲル状のものが好ましい。選定される着色物質が均質に分散されること、品質を損なうことなく比較的長期間の保存が可能であること、中性子やγ線を照射しても著しく劣化しないこと、中性子照射による放射化が著しくないこと、等の観点で選定を行った。最終的には、高分子吸収ポリマーやゲランガムが適しているという結論に至った。 続いて、放射線着色物質の選定を行った。当初の予定では、試作した試料各種について、熱・熱外、高速中性子、γ線の照射実験を行い、着色特性を確認しながら、各線質ごとに選定を行う予定であった。しかしながら、平成28年度も原子力規制委員会による新規制基準に対する適合審査のために、京都大学研究炉(KUR)は運転休止常態にあり、熱・熱外、高速中性子に関する照射実験を実施できなかった。そのため、京都大学原子炉実験所コバルト60ガンマ線照射装置を用いたγ線照射実験に重点を置くこととした。 作成した容積1ccの試料に対して0.1~10Gyのγ線照射を行い、照射後の試料に対して3種類の波長のレーザービームを用いた可視光透過実験を行い、吸収線量、光の透過率、試料の着色度との関係を確認した。主に、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリハライドについて実験を行った。γ線照射について、各物質の着色特性の基礎データを蓄積した。また、着色物質の選定について調査する中で、中性子、特に、低エネルギーの熱および熱外中性子については、ヨウ化リチウムによる着色の可能性が見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
γ線に対する着色物質の選定については当初の予定どおり進捗し、十分なデータが蓄積された。 しかしながら、「研究実績の概要」にも記述したように、平成28年度もKURは運転休止常態にあり、予定していた熱・熱外、高速中性子に関する照射実験が出来なかった。 以上のことより、進捗状況は区分(3)と判断した。平成29年度中にはKURの運転が再開する予定であるので、平成28年度の遅れを挽回できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、まず、着色パネルスキャナを作製する。可視光光源はRGB変色可能なLEDパネルとする。20cm×20cmの着色パネルで空間分解能5mmとする場合、最低40×40の受光部が必要となる。現時点では、48chの受光素子アレイをモーター駆動により走査する構造を考えている。必要に応じて、光源側および受光側に40×40の孔の開いたコリメータユニットを配置し、空間分解能の改善を試みる。 KUR運転の再開は平成29年度7月末の予定である。運転再開後、まず、前年度実施できなかった熱・熱外、高速中性子に関する照射実験を行い、各成分に対する着色物質の決定を行う。並行して、選定した各成分に対する着色物質を含有するゲル状の母材を封入するためのアクリル製容器を作成する。その寸法および形状は、一般的なBNCT用照射場の照射が直径12cmの円であることを踏まえて、縦20cm横20cmの直方体とする。パネル内は薄厚のアクリル板等により、空間分解能5mmに対応して5mm×5mmの小領域に区画する。厚さについては、平成28年度のγ線照射実験の結果から2mmと考えている。 作成した着色パネルは重水中性子照射設備およびγ線照射装置において、中性子およびγ線照射実験を行う。比較のため、放射化箔およびTLDによる線量評価も行う。照射後、着色パネルスキャナにより読取・データ処理を行う。取得したデータをもとに解析を行い、本手法の可能性、評価精度、有効性、適用範囲、等の評価を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度はKURは運転休止常態にあり、KUR重水中性子照射設備で予定していた熱・熱外、高速中性子に関する照射実験が出来なかった。そのため、その照射実験に使用する予定であった放射化箔(金およびインジウム,アルミニウム)を購入する必要がなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度はKURの運転が再開する予定であり、平成28年度に実施できなかった熱・熱外、高速中性子に関する照射実験を実施する予定である。この次年度使用額で放射化箔(金およびインジウム,アルミニウム)を購入する予定である。
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Research Products
(5 results)