2016 Fiscal Year Research-status Report
Systemic delivery of microRNA for therapy of IBD
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16K15590
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 浩文 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30322184)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | DDS / マイクロRNA / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、クローン病や潰瘍性大腸炎などの難治性炎症性腸疾患に対して新しい核酸治療剤を開発することである。平成28年度の計画では、文献上有効と考えられるmiR-29bを取り上げ、静注による腸炎発症の予防治療効果と各種サイトカインの動きについて検証することを予定していた。2%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を飲水に混じて9日間与えることによりIBDマウスモデルを作成し、体重減少や腸管長の短縮を腸管炎症度の指標として、組織学的に腸管壁(粘膜、粘膜下層、筋層)への炎症細胞浸潤やびらん、潰瘍形成などをスコア化することにより確定する。結果として、スーパーアパタイトに搭載したmiR-29bは、マウス尾静脈に4回注射することで、炎症の無い正常腸管を維持することができた。コントロールとして、negative control miRをスーパーアパタイトに搭載した場合や、スーパーアパタイトなしでnaked miRを投与した場合は、高度の腸管炎症を引き起こした。このことは、IBD治療におけるmiR-29bの全身投与に際してはスーパーアパタイトが必須であることを意味する。同じ、miR-29 family である miR-29aについても検証し、同様の腸炎予防効果を認めた。実際に、炎症腸管に核酸が送達されているかどうかを確認するために、マウスに存在しないmiR-29bと62.5%の相同性をもつ人工配列を設計し、アパタイトに内包して静注後、4時間後に腸管を採取してqRT-PCRによってこの外因性のmiR-29b誘導体の定量を行った。DSSを摂取させていない正常腸管に比べて、DSSにより炎症を起こした小腸、大腸(盲腸、横行結腸、直腸)では、有意に人工核酸の取り込みが高いという結果が得られ、病巣部への核酸の送達が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標である、クローン病や潰瘍性大腸炎などの難治性炎症性腸疾患に対して新しい核酸治療剤を開発するという課題は、スーパーアパタイトとmiR-29a ないしはmiR-29bを組み合わせることで概ね達成された。定量PCRでは、外因性に投与された人工核酸がDSSで惹起された炎症腸管に送達されていることが証明された。炎症腸管では様々な炎症性メディエーター(TNFalpha、IL6, IL-12, IL-23, IL-10など)が作用していることが想定される。しかし、炎症が進んだ状態でこれらの分子を検出しようとしても、すでに焼野原となっており痕跡しか捉えることができなかった。DSSを投与して初期の段階でこれらサイトカインの変化を調べるように、腸管サンプリングの時期を再検討する必要がある。非特異核酸配列に赤色蛍光を発するAlexa647を接合し、血中投与された核酸の局在をin situで調べた。炎症部位の粘膜固有層内に散在する形で赤色蛍光は確認されたが予想よりも少なかったことから、これまでに癌でみられたように大量の核酸が病巣部に集まることで核酸の効果が発揮されるのではなく、別のメカニズム(少量でかなりの効果を発揮させるメカニズム)の存在が示唆された。マウスに全身投与した場合の抗炎症効果は極めて大きく、これらのギャップを埋める作業仮説と実証が必要である。このように未だ不明点はあるものの、miR-29bだけでなく、miR-29aもスーパーアパタイトに搭載することで炎症性腸疾患の予防に利用できることが分かり重要な成果があったと考えられる。以上から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)少量のマイクロRNAで効果を示すことから、DSS腸炎の発症メカニズムを再考し、DSSによって破綻した粘膜上皮から腸管壁に侵入するバクテリアや食物抗原に対して最初に働きかける樹状細胞に注目する。樹状細胞は異物を認識して、ナイーブT細胞に抗原情報を提示し分化したT細胞を誘導する。DSS腸炎にあっては、樹状細胞はIL-6やTGF betaを産生し、Th17細胞を誘導することが知られている、更に、IL-23産生が病原性Th-17に活性化させる。DSS投与後に発動する、これら樹状細胞をめぐる一連の初期免疫応答が、それに続く炎症カスケードの拡散に重要と考えられている。平成29年度は、核酸と樹状細胞とのin situでの局在の比較、樹状細胞を特異抗体によって粘膜組織から抽出して核酸がどの程度検出されるか、あるいは上記の分子メカニズムについて検討する。もしも、核酸が樹状細胞に作用して効果的にTh17 細胞への分化を阻止しているのならば、比較的、少量の核酸で高い効果を引き出すことも理解できる。 2)DSS投与開始後に経時的に炎症腸管を採取し、mRNAを抽出、RNAseqにより遺伝子発現の変化を網羅的に調べる。miR-29a, 29bによって腸管壁内全体としてどのような炎症のカスケードが阻害されているのかIPAなどにより分析する。 3)DSS投与開始後に経時的に炎症腸管を採取し、microRNA (miR)を抽出、microarrayによりmiRNAの変化を網羅的に調べる。典型的には炎症性サイトカインを標的としてこれを抑制するmiRNAで進行性に減少するものを選別し(miR-29bはこのタイプに相当する)、そのmiRNAをスーパーアパタイトに搭載してマウスに全身投与し炎症性サイトカインを抑制することでIBDを治療する。先に行ったmRNA seqで発現上昇する分子との関連性にも注目する。
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