2016 Fiscal Year Research-status Report
Rat liver disease modeling with humanized liver and immune system
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16K15604
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鄭 允文 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80404995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 孝史 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (20633192)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生医療 / ヒト化ラット / 体性幹細胞 / 羊膜上皮細胞 / 間葉系幹細胞 / 造血幹細胞 / 血管内皮前駆細胞 / 肝オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
日本肝臓学会の肝がん白書によれば、肝癌による死亡者数は平成26年の時点で年間3万人を越える。肝癌の主な原因であるウィルス性肝炎は新規治療法の開発により減少傾向にあるものの、そのかわりに脂肪肝/NASHに由来する肝硬変を背景とした肝発癌は増加傾向にあり、その対策が喫緊の課題である。近年ES細胞やiPS細胞など再生医療を基盤技術とした肝機能補助が期待されているが、倫理問題、高額な費用、拒絶反応などの未解決の問題が残る。我々は母体・胎児間の免疫寛容の場である胎盤組織及びその羊膜に着目し、そこから4種類の体性幹細胞を採取する手法を確立した。これらの細胞を材料とし、新規の3次元培養法を用いてミニチュア肝臓である肝オルガノイド(肝臓原基)を作製し、肝硬変・肝不全に対する全く新しい移植治療法を開発することが我々の目的である。羊膜は発生学的にES細胞から分化した細胞で、上皮細胞と間葉系細胞から構成される胚体外組織であるが、胎児の発生初期の状態をとどめており、多能性幹細胞を保持するES細胞に極めて近い性質を有し、内中外胚葉のすべての細胞に分化しうる。さらに、羊膜由来幹細胞はスフィア形成能が高く、単離細胞と比較して誘導多能性幹細胞の作成に不可欠な転写因子の発現率が高い。また、本研究は、日本人由来のヒトnaive羊膜由来幹細胞を保存しており、他の研究にも供給できる点が極めて独創的である。将来、羊膜由来幹細胞が研究施設や企業へ分譲されることで医療、特に創薬の分野で日本発の医薬品の開発が急速に加速されると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は予定帝王切開症例の本来廃棄される胎盤組織より、羊膜幹細胞(ASC), 間葉系幹細胞(MSC, 血管内皮前駆細胞(EPC), 造血幹細胞(HSC)の単離を継続的に行い、将来的に臨床応用可能なセルバンクを作製している。上記細胞の内、肝細胞への分化傾向をもつ羊膜幹細胞を、クラレが開発した特殊な3Dパターンプレート上で培養すると、単離された細胞が自律的に集簇し球体を形成した。その球体は通常の平面培養と比較して、未分化性を維持しながらも肝細胞に特有な遺伝子の発現が認められた。さらに間葉系幹細胞や血管内皮前駆細胞と混合培養し肝分化因子を投与することで、α-1アンチトリプシンを中心とした肝細胞特異的な遺伝子発現、蛋白合成の増加をみとめた。機能面に関しては、ICG(インドシアニングリーン)の代謝、グリコーゲンの貯蔵、アルブミンの分泌能などを示した。形態学的には、ASCはオルガノイドの辺縁に、MSCとEPCは中心部に局在し、一部の血管内皮細胞は血管様構造を構築することが明らかとなった。続いて、移植条件を最適化するために、作成された肝オルガノイドをラットに移植した。移植の際にラットにレトロルシンを投与して肝障害状態として、さらに70%肝臓切除を行うことで肝臓への分化を促進するニッチ環境を整えた。また、臍帯血由来造血幹細胞を分離して、半致死量の放射線を照射したラットの尾静脈よりhCD34陽性細胞を移植した。3ヶ月後にラット末梢血をフローサイトメトリーで解析すると、ヒトCD235a発現細胞は僅かながら確認できた。今後、ヒトキメララットを作成するため、ヒト由来白血球とヒト肝細胞の生着状況や機能などを確認する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒト由来細胞の生着のために肝オルガノイドを分化誘導させたものを移植することや、動物数や移植時間を増やすこと、ヒト血液系の成長因子の導入することも検討し、より適切な移植技術の確立を目指して行きたい。さらに、より効率的な肝細胞への分化を目指し、疾患モデル動物に移植して肝疾患の改善効果を確認する。
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Causes of Carryover |
海外から重度免疫不全FRGラットの導入は、従来の計画より遅れてしまっており、この分の経費を次年度に使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究では、海外からFRGラットを導入し、多種のFACS用抗体や専用の幹細胞用培地・分化培地も多量に使用する予定である。またモデル動物の作製に向けて多数の実験動物を必要とするため、次年度使用額と繰越経費を合わせての使用を計画している。
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Research Products
(2 results)