2016 Fiscal Year Research-status Report
一酸化窒素リリース型インジェクタブルゲルの設計と虚血疾患への展開
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16K15628
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
長崎 幸夫 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90198309)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノメディシン / 一酸化窒素 / 活性酸素種 / 心筋梗塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機合成を基盤とする合成医薬はこれまで多くの人々を救ってきた。しかしながら「作用」と「反作用」は表裏一体で、しばしばその副作用が患者のQOLを低下させてきた。近年、「夢の薬」といわれた分子標的薬が実現し、効果が飛躍的に向上したものの、その不十分な集積性や個人差など、限界も分かりつつある。一方で、ナノテクノロジーを基盤とし、高い血中滞留性と腫瘍集積性を併せ持つナノ粒子に既存薬物を封じ込め、高度な化学治療を行う薬物送達システムは分子標的治療と双璧をなす創薬技術として近年急速に発展を続けているものの、その腫瘍への集積性は十分とは言えず、副作用や長期毒性が十分に解決されたとは言いがたい。このような現状を鑑み、きわめて副作用の小さい薬物治療の創出がこれからの重要な課題である。 一酸化窒素(NO)は生体内で血管新生やアポトーシス誘導など、様々な生理機能を有することが知られている。申請者らはこれまで、生体内で時間・空間的にNOを発生させ、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導せしめる新しい抗腫瘍ナノメディシンの設計を行ってきた。本研究では生体環境下でゲル化するナノ粒子にNO発生能を創り込み、心筋梗塞領域へ投与し、心筋内でのゲル化により長期滞留性を向上させるとともにNOを発生させて血流の上昇と新生血管増殖効果を目指した。また、発生したNOを消費する活性酸素種を消去し、効果的なNOによる血管新生と心筋梗塞治療法を目指した。これらの材料設計及び心筋梗塞モデルに対する評価により、NO発生及びROS消去単独材料に比べ、両者を併せ持つ材料は極めて高い効果を発揮することが確認された。一方で、両材料を組み合わせたゲルの機械的強度は数百Pa程度と比較的柔らかく、さらなる機械的強度の検討が必要であろう事が次の目標として明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的は達成しているものの、ゲルの強度にさらなる検討の余地がある事が明らかになり、引き続き検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
材料の組成、鎖長等による機械的強度への検討を進めるとともに、シリカやクレイなど第三成分による機械的強度への影響を検討する。
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Causes of Carryover |
当初の目的は達成しているものの、ゲルの強度にさらなる検討の余地がある事が明らかになり、引き続き検討を進めるため、一部予算を繰り越しにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越額は材料合成、物理化学評価及び人件費に用いる
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