2016 Fiscal Year Research-status Report
グリオーマ幹細胞epigeneticsの盲点をついた新規がん幹細胞標的治療法開発
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16K15640
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
北中 千史 山形大学, 医学部, 教授 (70260320)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Tumor-initiating cell |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストンH3における27番目のアミノ酸残基リジン(H3K27)をメチル化する酵素EZH2がグリオーマ幹細胞維持に必須であるとの先駆的論文の発表以来EZH2阻害によるH3K27メチル化の「抑制」がグリオーマ幹細胞治療になるものと信じられてきたが、我々は先行論文に潜む「盲点」に着眼し、むしろH3K27メチル化の「促進」がグリオーマをはじめとするがん幹細胞治療に有用であるとの一見対立的な、しかし実際は相互排他的でない仮説構築に至った。具体的にはH3K27脱メチル化酵素による幹細胞維持に関わる遺伝子のH3K27メチル化抑制ががん幹細胞やH3K27低トリメチル化が見られるがん細胞の維持に必須の役割を果たしているのではないかと考え、このような仮説がグリオーマについて成り立つか、さらにはがん種を超えて成り立つ普遍的な仮説となりうるかという挑戦的な課題に挑むべく一連の解析を行った。その過程でまず明らかになったのが、非小細胞肺がんでは必ずしもがん幹細胞に限らず細胞全体のH3K27のトリメチル化状態が低下しているということである。そこで非小細胞肺がん細胞に対するH3K27脱メチル化酵素阻害薬GSK-J4の効果を検討したところ、正常細胞に対して毒性を示さない低濃度において細胞死(アポトーシス)を誘導すること、さらには当初予想していなかったことであるが、抗がん剤との組み合わせにおいてもその効果を増強することが明らかになった。これらの結果はH3K27トリメチル化レベルが低いがん細胞ではH3K27脱メチル化酵素がその生存維持に重要な役割を果たしていることを示すものとなり、当初仮説の一端を支持する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の仮説の一つである「H3K27トリメチル化レベルの低いがん細胞においてはその維持にH3K27脱メチル化が重要な役割を果たしている」という考え方を示唆するデータが得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きグリオーマやその他のがんにおいて、がん幹細胞やH3K27トリメチル化レベルの低いがん細胞を対象とし、H3K27脱メチル化酵素の役割についてpharamacologicalないしgeneticアプローチにより検討を継続する。特にgeneticアプローチとしてはH3K27脱メチル化酵素であるJMJD3、UTXをノックダウンし、その影響につき検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究過程において申請時の予想を超える新知見が得られ、この新知見に関する検討を十分に行うことで得られる情報に基づいて当初予定の研究を実施するほうが、当初予定の研究を拙速に実施するよりもより優れた成果が期待でき、研究費の有効活用の観点からも有意義と考えられたため。 と同時に、科研費の効率的かつ有効利用を最大化するため、研究課題で行う予定の実験のうち、研究室に既存のマテリアルを使用することで推進可能なものは極力既存のマテリアルを使用することで実施する努力をしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新知見に基づいて今後得られるであろうと期待される新情報を踏まえつつも方法論的には当初計画どおりに研究を進める予定であり、そこで必要とされる一連の実験を実施するために研究費を使用する。
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Research Products
(1 results)