2016 Fiscal Year Research-status Report
笑い発作に伴うてんかん性脳症の動物モデル―光遺伝学を用いた異常波伝搬経路の検証
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16K15644
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
長谷川 功 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60282620)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光遺伝学 / 笑い発作 / てんかん性脳症 / 視床下部過誤腫 / 視床背内側核 / 前頭葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、視床下部過誤腫にともなうてんかん性脳症(認知機能障害)の病態メカニズムとして、『視床下部から視床背内側核(MD)を経て前頭前野(PFC)に至る経路を異常神経興奮が伝わり、正常な神経活動が阻害されると、認知機能が低下する』という作業仮説を立て、これに即したラット動物モデルの開発に挑戦する。具体的には、光遺伝学的手法によりラット視床下部-MD間の経路特異的な興奮刺激を反復し、MDとPFCへの刺激後異常神経発火や自発的異常発火の誘導を試みる。 H28年度には、MDから逆行性に細胞体が標識される視床下部の部位①と、MDから順行性投射を受けるPFCの部位を、組織学的に同定した。ChR2とGFPを含む遺伝子コンストラクトを作成してアデノ随伴ウィルスAAV9に挿入し、①で同定した視床下部の領域に脳定位的に注入し、ウィルス注入3週間以後に、MDにオプトロードを慢性留置し、青色光刺激によるKindling(てんかん誘発閾値以下での慢性刺激)を行った。MDに刺入したオプトロードとPFCに留置した微小電極から、刺激前後に記録される脳波および電場電位local field potentialsを解析し、実験開始から約2週間後に、MDとPFCで刺激後異常発火や、自発的異常発火が認められることを明らかにした。行動学的には、ラットが喜ぶ際に出す高周波の鳴き声が観測され、また髭の非定型的な動きが誘発されることがあるようになった。また、作業記憶課題のシステムを試作し、覚醒動物の行動訓練を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光遺伝学的手法でラット視床下部-MD間の経路特異的な興奮刺激を反復することにより、MDとPFCへの刺激後異常神経発火や自発的異常発火の誘導に成功した。行動学的にも笑い様の鳴き声が誘発されており、行動課題の構築もおこなった。以上の理由により、順調に進展していると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度には、まず28年度に発見したkindling現象をおこす光刺激の条件を最適化する。これにより、PFC・MDにおいて誘導された刺激後異常発火や自発的異常発火を、電気生理学的検証に必要な動物の頭数を確保して解析するとともに、部位特異性を検証する。これと並行して、前頭葉機能の行動学的解析も進め、視床下部過誤腫に伴うてんかん性脳症の責任脳回路同定を目指す。
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Causes of Carryover |
H28年度にはシステムの構築に注力したため、使用した動物や試薬等の全額が頭書の予定を下回ったが、研究の進捗には上記のとおり問題がない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度には動物の頭数を増やして定量的な解析を加速して進めるため、H28年度からの繰り越し分と併せて予算を使用する予定である。
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