2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代プロテオミクスによる悪性グリオーマのバイオマーカー探索
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16K15645
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中田 光俊 金沢大学, 医学系, 教授 (20334774)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオマーカー / 膠芽腫 / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】悪性グリオーマの早期診断や病勢を把握するバイオマーカーはこれまで同定されていない。悪性グリオーマの早期発見は、手術による腫瘍細胞の摘出効率を最大限に高め、この根治困難な疾患を克服に導く可能性がある。本研究は悪性グリオーマ症例の継時的液性検体を使用し、次世代プロテオミクスSWATH(Sequential Windowed Acquisition of all Theoretical fragment ions)法により悪性グリオーマのバイオマーカーを同定することを目的とする。 【方法】同一の悪性グリオーマ症例の術前及び術後の液性検体(脳脊髄液15症例、血液5症例)、同一症例の再発時の脳脊髄液(5検体)及び非脳腫瘍患者由来の脳脊髄液(5検体)を使用した。液性検体をトリプシン消化した後、定量的プロテオミクス解析を行い、バイオマーカー候補を抽出した。選択されたマーカーを用いて多変量解析を行った。 【結果】脳脊髄液からは20分子を同定し、高精度マーカー定量を行った後に悪性グリオーマ依存性に変動するマーカー候補分子を4種類に絞った。血液からは9候補分子が同定された。9分子はいずれもこれまでに血中悪性グリオーマ診断マーカーとして報告されていない。うち3分子は悪性グリオーマ組織と非腫瘍脳組織のプロテオミクス比較定量において悪性グリオーマ組織での定量値が有意に高く悪性グリオーマ組織由来であると示唆された。 【結論】悪性グリオーマ症例の脳脊髄液および血液を定量プロテオミクスによって解析することによって悪性グリオーマの存在に依存して変動するタンパク分子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
悪性グリオーマ組織の初発時、初期治療終了時、再発時に得た髄液・血液検体を解析対象とし、予定通りData Dependent Acquisitionでそれぞれの検体でタンパク質の種類を同定し、SWATH法のためのデータベースを構築した後にSWATH法を実施した。その結果、各症例における継時的な髄液・血液のタンパク定量プロファイルを得た。この中から髄液、血液でそれぞれ複数の候補マーカー分子が同定された。候補バイオマーカー分子の基本的な基準としては初発時に高く初期治療終了時に低下、再発時には再度上昇するタンパクとした。さらに健常人や他疾患と比較し悪性グリオーマで圧倒的に高い発現を示すことで腫瘍特異性が高い分子であることを理想とした。これまでの解析では、逆に腫瘍の存在時に低下し治療後に上昇、健常人で一定の値を示すタンパク分子も候補に含まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から抽出された候補分子の機能解析に着手するとともにバイオマーカーとしての妥当性を検討する。 1) 候補分子の組織内発現局在を免疫組織化学で検討することにより候補分子産生細胞を同定する。 2) 対応する症例の摘出検体における候補分子のmRNA量を定量的PCRにより、またタンパク量を絶対定量プロテオミクスにより測定し髄液・血液中の定量値との相関を解析する。 3) 候補分子の生物学的機能を解析する。候補分子の産生細胞が腫瘍細胞であると確認できた分子に限定して次の実験を行う。候補分子のsiRNAを作成し、悪性グリオーマ細胞株に導入し候補遺伝子をノックアウトさせた細胞株を作成する。樹立した細胞株を使用して細胞増殖・浸潤能解析を行い候補遺伝子の機能評価を行う。 4) バイオマーカーとしての妥当性評価 候補バイオマーカーを5種類に絞り、新たに悪性グリオーマ30症例、他の脳腫瘍30症例から採取した液性検体を絶対定量プロテオミクスで解析し、候補分子の産生量を測定する。この結果から候補分子が悪性グリオーマに特異的であることを確認し、その絶対定量値と臨床経過中の病勢との相関を評価する。本解析から候補分子が診断マーカー、予後マーカー、予測マーカー、モニタリングマーカーのうちいずれとして妥当かを明確にする。
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Causes of Carryover |
試薬類の購入が予定より少なかったが、予定通りの実験が可能であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り、実験に使用する消耗品、学会発表旅費、謝金に使用する。
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Research Products
(1 results)