2016 Fiscal Year Research-status Report
脳神経系疾患に潜む皮質拡延性抑制の局所脳冷却による制御
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16K15646
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鈴木 倫保 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80196873)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 局所脳冷却 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは、片頭痛から頭部外傷までの多岐に渡る中枢神経系の疾患で見られる「皮質拡延性抑制(Cortical Spreading Depression; CSD)」を局所脳冷却によって制御することである。CSDは大脳皮質上をゆっくりと伝搬する神経細胞の脱分極の波であり、病態の変化と密接に関わっている。CSDは病態発現の前兆と関わっているため、CSD自体を制御することができれば、病態の悪化を未然に防ぐことができる可能性がある。その方法の1つとして、申請者が研究を続けてきた、脳の一部を直接的に冷却する技術である「局所脳冷却」を用いる。局所脳冷却は、CSDを引起こす疾患であるてんかんや脳梗塞に対して治療効果があるが、これら治療効果は局所脳冷却が異常脳波や脳循環代謝だけでなくCSDをも制御することで引き出されている可能性がある。 H28年度は、電気生理学実験を主に実施した。ラットの頭部を開頭し、CSDのゆっくりとした波を捉えるべく、脳表に銀/塩化銀電極と微小熱電対を5mmの距離を取り一対ずつ設置した。開頭し露出した脳表部分に合うサイズ・湾曲のガラスカバーを被せ、脳表とガラスカバーとの間を37℃の人工脳脊髄液(ACSF)にて灌流させた。脳血流の非侵襲的計測のために、レーザースペックル計測用のカメラと赤外線レーザー投光器を用いた。脳温の制御には温かいACSFと冷たいACSFを切り替えて灌流出来るようにし、必要なときのみ局所脳冷却が実施できるような設定とした。 その結果、ラット脳表において、KCl誘発の皮質拡延性抑制(CSD)を安定して確認することができた。冷却による効果については、CSD発生前より冷却を開始することでCSDの頻度を抑えられることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
麻酔下においてラットの脳表よりKClによって誘発される皮質拡延性抑制(CSD)を安定して確認することができた。冷却による効果については、CSD発生前より冷却を開始することでCSDの頻度を抑えられることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
一酸化窒素の関与についての調査:脳血流の変動はレーザースペックル計測装置にて評価することができるが、その根本的な因子として血管拡張や血管内皮保護作用のある一酸化窒素(NO)を定量することによって、CSDの起こりやすさを調べる。実際には、CSD誘発前後の摘出脳を用いて、大脳皮質の血管内皮細胞内にある構成型NOS(eNOS)の総タンパクとセリン1177―リン酸化eNOSレベルをウェスタンブロットにより解析し、CSDが脳血流に及ぼす影響よりNOの関与を評価する。
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Causes of Carryover |
予定していたよりも、脳波センサと温度センサの消耗数が少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ウェスタンブロッティングに必要な試薬の調達と学会の出張旅費として使用する。
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Research Products
(1 results)