2016 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞技術を用いた血清反応陰性脊椎関節炎の病態解明
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16K15663
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉富 啓之 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (50402920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸口田 淳也 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (40273502)
金 永輝 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (90620344)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子編集 / iPS細胞 / 強直性脊椎炎 / 血清反応陰性関節炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
血清反応陰性脊椎関節炎とは、強直性脊椎炎をはじめとした乾癬性関節炎、腸疾患関連関節炎などを含むリウマチ因子が陰性の関節炎疾患群で、脊椎や体幹に近い関節に骨髄の炎症や腱付着部炎を生じ骨新生に至る疾患である.生物学的製剤の登場は関節リウマチの治療を劇的に改善し大部分の患者で満足すべき治療効果が得られているが、血清反応陰性脊椎関節炎に対しては、抗TNF療法は病状の進行を防止せず、さらなる病態解明が求められている。 本研究では血清反応陰性脊椎関節炎の患者よりiPS細胞を樹立し、そのiPS細胞を用いて病態の解明を行うことを目的としている。血清反応陰性脊椎関節炎の中でも強い臨床的症状を示す疾患は強直性脊椎炎で、HLA-B27が最も疾患に関連する遺伝因子とされている。平成28年度の研究において、HLA-B27を有する強直性脊椎炎患者3症例の末梢血にエピゾーマル方にて山中因子を一時的に発現させ、それぞれの症例からiPS細胞を樹立することに成功している。さらに、HLA-B27遺伝子のノックアウトや強直性脊椎炎関連遺伝子のリスクアレル挿入を行うための遺伝子編集の条件検討を行い、目的とする遺伝子のノックアウトや目的とする配列やマーカーの挿入を行うための効率の良いプロトコールを確立している。さらに骨分化を容易に検出するための骨細胞系マーカー遺伝子のリポーター細胞の作成にも成功している。この様にiPS細胞を用いた血清反応陰性関節炎の病態解明に対する本研究は、効率良い研究の遂行に向け順調に経過している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強直性脊椎炎の疾患特異的B27陽性iPS細胞の樹立、遺伝子編集を行うためのプロトコールの確立、さらに骨分化解析を行うためのリポーター細胞の樹立に成功しており、計画通り順調に経過していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平性29年度は平成28年度に引き続き研究を行う。すなわち、樹立した強直性脊椎炎iPS細胞に対してHLA-B27やその他の関連遺伝子の遺伝子編集を行い、強直性遺伝子のリスク遺伝子をノーリスクタイプに改変したiPS細胞を樹立する。さらにこれらのiPS細胞を用いて軟骨分化や骨分化誘導を行い、これまで強直性脊椎炎などの血症反応陰性関節炎に関連が指摘されている遺伝子変異がどのように関節炎に関与するのか、その病態の詳細を明らかにする。また骨分化リポーターiPS細胞を用いた骨化の亢進などの病態の再現を試み、現在では有効な治療が少ない血清反応陰性関節炎に対する新規治療開発のための化合物スクリーニングの礎としたい。 またこの2月に、血清反応陽性関節炎である関節リウマチ患者において、申請者が従来研究を行っていた炎症局所に存在するPD-1(hi) CXCR5(-)CXCL13(+)CD4陽性T細胞に類似した分画であるPD-1(hi) CXCR5(-)CD4陽性T細胞が患者末梢血にも存在し病態に関与する新たなT細胞分画であることが海外のグループからも報告され注目を集めている。陰性のCD4陽性T細胞が関節炎病態に関与する新たなT細胞分画であることが報告され注目を集めている。血清反応関節炎に関連する乾癬などではIL-17を標的とした治療が有効であり、HLA-Bと相互作用を行うことができるCD4陰性のT細胞においてPD-1やIL-17に関連した免疫現象が存在するのかの解析を行い、軟骨・骨分化だけでなく免疫の側面からも血清反応陰性関節炎の病態解明を試みる。
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Causes of Carryover |
年度末に購入予定であった試薬の納入予定日が年度を超過することが明らかになっため、50万円を次年度に繰り越して使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度末に購入予定であった本研究を遂行するための試薬を予定通り購入し、研究を遂行する。
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