2017 Fiscal Year Research-status Report
報酬系活性化BMIによる慢性痛解消の再生医学的検証と高次脳機能解析
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16K15673
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
齋藤 繁 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (40251110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朱 赤 前橋工科大学, 工学部, 教授 (20345482)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 慢性痛 / Brain Machine Interface / 高次脳機能修飾 / ロボット工学 / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
疼痛診療の現場で遭遇することの多い難治性の神経障害性疼痛の発症においては、脊髄を含めた痛覚伝導神経回路の器質的・機能的な可塑的変化が原因であることが示されている。本年我々はその中でも、中枢神経系のペインマトリックス、脊髄後角の各線維層、グリア細胞と脊髄後角ニューロンの関連性について示唆に富む実験結果を得ることができた。昨年までの研究成果の延長として、神経障害性疼痛のモデル動物では脊髄後角のGABA作動性ニューロン数が減少することが報告されているが、脊髄後角での制御された神経再生は「慢性痛」治療に必須であることを再度実証できたと考えられる。 中枢神経系のペインマトリックスは様々な変容をきたすと報告されており、それを構成する脳部位の特定が進んでいる。本年の当科の研究でもいわゆる感情面からの疼痛認知修飾をfMRIなどを用いて明らかにした。これまでの当方からの報告(Ogino et al.Anesth Analg 2014, Ogino et al. Cerebral Cortex 2007, Kakeda et al. Neuroreport 2010)を更に推し進める結果となった。現実の臨床においても認知行動療法など高次脳機能の修飾が疼痛治療の主軸の一つとして捉えられるべきであると広く認知されつつある。こうした部位での神経可塑性制御も慢性痛治療には欠かせないことが再度証明された。 本年の研究により、末梢神経障害性の痛みでは下行性制御系の活動が重要である事が臨床症例おいても再確認された。並行する研究として、動物実験において三環系抗うつ薬が末梢神経障害後の痛み誘発性鎮痛の減弱を回復させることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性痛の主たるものである神経障害性疼痛の発症においては、大脳皮質と脊髄を含めた痛覚伝導神経回路の器質的・機能的な可塑的変化が原因とされており、平成29年度はその中でも長期の慢性痛状態における脊髄後角の脱抑制、すなわちGABA受容体やグリシン受容体など脊髄後角ニューロンの興奮を抑制するシステムの機能低下を証明することができた。本年までの実験により神経障害性疼痛のモデル動物では脊髄後角のGABA作動性ニューロン数が減少することやグリア細胞の活性化が報告されているが、脊髄後角での制御された神経再生は「慢性痛」治療に必須であることを更に実証できたと考えられ、神経系の正常に近い再生の意義が再確認できた。 帯状回周辺を中心とするペインマトリックスの慢性痛における意義が報告されており構成する脳部位の特定が引き続き進んでいるが、本年の当科の研究でも臨床例のデータに基づき、心理面、社会的側面からの疼痛認知修飾に関して客観性を持つMRI法などを用いて明らかにできた。本年もこれまでの当方からの報告を更に推し進める結果となった。慢性痛の臨床においても認知行動療法など高次脳機能の修飾が疼痛治療の主軸の一つとして捉えられるべきであると広く認知されつつあり、臨床例での実践を当分野でも実践している。その背景にある大脳特定部位での神経可塑性制御も慢性痛治療には欠かせないことが昨年に引き続き画像データからも証明された。 末梢神経障害性の痛みでは下行性制御系の活動が重要である事が臨床症例おいても確認されているが、動物実験でも検証できている。関連する研究として、動物実験において三環系抗うつ薬が末梢神経障害後の痛み誘発性鎮痛の減弱を回復させることが長期飼育後にも確認された。慢性痛は長期に続く痛みであることから、短期的な視点のみでは真の解明は難しく、両側前帯状回、右後帯状回の量的変容が再確認できたことの意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
リドカイン徐放技術(Suzuki T et al, International Journal of Drug Delivery 2014)を更に臨床研究で検証するとともに、栄養因子であるBDNFや疼痛就職物質であるデクスメデトミディンやレボブピバカインの徐放薬を作成する。まずは動物実験において安全性有効性を確認した後、臨床研究への準備を行う。臨床研究開始までの基礎研究を本研究において実施し、その成果を踏まえて新規プロジェクトとして慢性疼痛患者に対するデクスメデトミディンやレボブピバカインの徐放薬の臨床研究に着手する。慢性痛に対する再生医療の効果を確認する手法を開発するため、引き続き鎮痛必要日数の予想できる痛み「術後痛・外傷痛」に対する鎮痛効果確認法を検証する。また、慢性疼痛に対するADLを損なわない高コンプライアンス鎮痛法として、徐放薬を用いた鎮痛法と認知行動療法・リハビリテーションによる包括的鎮痛療法を完成させ、それらと比較するあるいは合体させることで、神経系再生に基づく鎮痛法の検証計画を立案する。 引き続き医理工連携を進め慢性痛に対する認知行動療法と理学療法の組み合わせのなかでロボット技術を適用することを計画する。運動機能の再生に着目が集まる中で、感覚系に着目した養は本邦ではほとんど前例のない状況であり、参加者と実施者の双方にとって利便性が高いプログラムになるよう改変を加える。計画中のプログラムの事前アセスメントに看護的視点からの寝具や洗面所、浴室の使用など生活動作に関して情報収集を行い、治療的効果との関係を更に深く検討する。心理面と身体面の両面からプログラムを改良するため、さらに細かい配慮を行い、慢性痛の再燃、再発のリスクを軽減しつつ神経機能再生を促進する手法、療養法を開発する。
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Causes of Carryover |
おおむね予定どおりであったが、若干物品の購入額が小さくなったため、来年度の物品購入等に充てたいと思う。
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Research Products
(5 results)