2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K15677
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大井 まゆ 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (10716567)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 挿管困難症 / 自動挿管器具 / 吸気流速 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身麻酔や心肺蘇生時の気道確保は生命維持に不可欠な手技であり、確実かつ迅速に行われなければ死に直結する。このため気道確保は100%の成功率が求められる。しかし、ビデオ喉頭鏡など既存の手技・デバイスでは、極端な肥満や猪首、開口制限や小顎症の患者といった気管挿管が困難でかつマスクによる気道確保も難しい患者を数分で死の危険にさらすことがある。 我々は、どんな患者に対しても、また、どんな術者でも100%の気道確保を実現することを目指し、既存手法のような視認による気道確保ではなく、患者の呼吸という気管機能の本質を活用した新規デバイスの開発を行うことを本研究の目的として研究を遂行している。 これまで、口腔および気道を模したモデルにおいて流速を感知するセンサーを用い最大流速を感知する原理実証および評価・改良を行った。具体的には、口腔内で自発呼吸の吸気流速を感知し最大流速を生む方向に向かうデバイスの開発のため、まず、呼気から声門の方向を特定するセンシング部の作成を行った。呼気から生じる流速センシングシステムの開発は行えており、今後、提案手法の原理検証を行うためにシミュレーターや生体での流速計測、流体数値解析および3Dモデルでの模擬実験を行う予定である。本年度は首ふり運動と直動を組み合わせた挿入機構を開発して初年次に開発したセンシングシステムと統合し、評価実験を行う。これらは強力な医工連携体制のもと、将来的な臨床応用および製品化を目指して精力的に取り組まれる。今後将来的な産学連携や臨床応用に結び付くレベルのデバイス開発を目指している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,視覚によらない新しい気管挿管法として,患者の呼気を感知し声門へと向かうデバイスを開発している. 本年度は提案手法の根幹である呼気の感知と声門方向の特定の原理実証を行うために試作機を開発した.試作機は既存のスタイレットと似た形状・使い方を想定しており,気管チューブを挿管したあとは引き抜くようになっている.先端に3つの風口が点対称に配置してあり,末端のMEMSフローセンサにて風速を検出する.なお,MEMSフローセンサは人の呼吸時の風速を参考に決定した.試作機先端が風の流れに対し垂直である場合はそれぞれの出力は等しくなり,そうでない場合は流れの上流に近いセンサの出力が大きくなるはずである.また,試作機は先端にてリンク機構による1屈曲自由度を持ち,風向きに対し先端を振ることができる. このデバイスを評価するために,口腔を模した簡易モデルを作製した.気道方面から一定風速にて送風し,センシングを行いながら挿管操作を行った.まず,モデル内にて先端を様々な角度に向けたところ,風上に向いた際に3つのセンサの出力が最も大きくなり,かつ出力がほぼ均一になっている結果が得られた.これにより,呼気の感知による声門の特定が可能であるという基本的な原理の実証ができた.一方,食道の先端は閉塞されており風の流れは気道側からしか生じないが,気道と食道の分岐点付近では複雑な風の流れが生じ,先端のわずかな位置変位でも大きくその出力が変わることがわかった. 加えて,より風向きを特徴的に捉えるための先端形状の検討を,いくつかの試作機を通し行った.その結果,先端に平面的に風口を配置している場合と比較し,鋭角な先端に斜めに風口が取り付けられている場合はより3つのセンサ出力に差が出ることを見出した.
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度は試作機の開発を行い,提案手法の原理実証を行った.これを踏まえ本年度はより高い完成度のデバイスの開発を行う.それらは大きく,1)風速検出機構の改良,2)先端を屈曲させるためのワイヤ機構の開発,3)医師の操作のためのインターフェースの開発,の3点となる. 1の風速検出に関して,現在使用しているフローセンサは先端に取り付けるには大きく,開発した試作機では根元に取り付けているため,風の流れが弱くかつ時間応答が遅いという問題がある.この解決のため,より小型なセンサをデバイス先端に取り付けることにより高い感度かつ早い応答にて流れを検出できるようにする. 2のデバイス先端屈曲に関して,試作機ではリンク機構による1自由度屈曲を実現している.屈曲は安定するものの,自由度が不足しており,実際の挿管でスムーズな操作ができるとは考えにくい.そこで本年度に開発するデバイスにはワイヤ機構を採用する.ワイヤはデバイスの2方向に沿わせ,屈曲2自由度を実現する.デバイス根元にワイヤを巻き取るプーリを取り付け,医師が操作可能なものとする.ワイヤ機構の採用により,デバイスの細径化も実現できると考えている. 3のインターフェースの開発に関して,現在はオシロスコープの表示をみながら挿管操作を行っている.より直感的な操作を実現するため,どの方向に先端を向けるべきかを示すディスプレイを開発する.コストと軽量化の点から,ディスプレイは十字に並べられたLEDとし,誘導すべき方向のLEDが点灯するような仕組みとする.また,人間工学的に扱いやすい屈曲操作部を設計し実装することで,医師の使いやすいデバイスを目指す.
|
Causes of Carryover |
当初計画で必要と考えていた物品が最小限の購入で行われたこと、および臨床研究の準備がまだ整わなかったことが挙げられる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在作成している気道モデルをより生体に近い形に作成すること、流速感知センサーの狭小化、気道モデルの上質化、生体での流速測定のデバイス購入などに充てたいと考えている。
|