2018 Fiscal Year Research-status Report
加齢黄斑変性の新規病因遺伝子探索をもとにした戦略的治療開発
Project/Area Number |
16K15733
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
馬場 高志 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (40304216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 幸次 鳥取大学, 医学部, 教授 (10213183)
宮崎 大 鳥取大学, 医学部, 准教授 (30346358)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 加齢黄斑変性 / 疾患モデルマウス / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,レーザー誘発脈絡膜新生血管(laser-induced choroidal neovascularization:以下、L-CNV)モデルマウスにおいて,もともと眼局所に局在している因子X発現細胞がL-CNVの誘導を担っているのではなく,骨髄由来細胞が血行性に動員されレーザー照射領域に集簇し,L-CNV発生を促すことを明らかしたが,骨髄由来細胞が局所に動員される機序を明らかにするため,レーザー照射後早期から,時系列的に,L-CNVモデルマウスの網膜脈絡膜伸展標本(retinal choroidal whole mount)を作成し,解析した。その結果,レーザー照射12から24時間後から、L-CNV導入期の局所変化として,神経膠細胞が誘導され,これが主体となって骨髄由来細胞を動員するべく細胞接着分子をはじめとする分子群を発現することが明らかになった。その時期は,因子Xの発現は,あくまで限定したものであり,L-CNV導入期に果たす役割もまた,限られたものである事が推測された。一方,導入期の局所反応によって骨髄由来細胞が動員され集簇することで,結果的に因子X陽性骨髄由来単球系細胞が増加し,L-CNV活動期を迎える。局所の集簇細胞によって因子Xの発現が高まると,更に因子X陽性骨髄由来単球系細胞が動員され集簇することで,レーザー照射3日後に局所の因子X発現はピークに達する。また,活動期において,因子Xは免疫担当細胞を動員するだけでなく,因子X受容体を発現した骨髄由来内皮前駆細胞が局所に集簇し,一部は血管内皮細胞に分化するといった動態も新たに明らかになった。その後,動員された骨髄由来単球細胞が,増殖活動性が高いL-CNV外周から再び血行性に全身へ戻ると同時に,因子X発現も漸減し,L-CNVは成熟期を迎えることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在,一連の研究結果を開示すべく投稿準備中であるが,下記理由で,研究結果が開示できるまでの期間については未確定な要因がある。 1.現在,実験を進めている当施設の動物実験施設の改修工事中で,要求された追加実験の延期を検討する可能性がある。 2.研究結果は,海外企業を含む共同研究者と協議して発表する必要があるため,投稿に一定の時間がかかる。また,競合する他研究グループとの利害関係から,成果を分割してではなく,最短期間で可能な限り同時期にまとめて開示するのが望ましいため,投稿する学術誌が限られ,掲載に時間がかかる可能性がある。 3.一連の研究結果を導き出すために要した実験と結果が多岐に渡り,内容的にも成果を発表できる学術誌が限られるため,全ての成果を単独で発表できなかった場合は,複数の論文にせざるを得ない。もし,複数の論文に分割する場合,その構成を再度見直すための時間が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.レーザー誘発脈絡膜新生血管(laser-induced choroidal neovascularization:以下,L-CNV)集簇細胞の時系列での空間的配置と動的解析:レーザー照射後早期に,局所に集簇した神経膠細胞が骨髄由来細胞を動員し,結果的に因子X陽性単球系細胞が集簇する。L-CNVの成長が停止し,成熟期を迎えた後に,徐々に因子Xが消褪するが,神経膠細胞と因子X陽性細胞の各ステージにおける空間的な局在と動的な変化を,網膜脈絡膜伸展標本と免疫組織学的手法を用いて解析することで,L-CNV形成時の立体的な細胞間ネットワークを明らかにする。また,因子X受容体を発現した骨髄由来内皮前駆細胞の動員と血管内皮細胞への分化に因子X陽性細胞がどのように連携するのかを解析することで,単球系だけでなく各骨髄由来細胞によるL-CNV構築の動的なメカニズムを解明する。 2.集簇骨髄由来細胞の同種集団感知機構の解析:レーザー照射後の導入期に動員された骨髄由来細胞の集簇により引き起こされる因子Xの局所での過剰発現が,L-CNV形成において,重要であることが明らかにされたが、時系列でL-CNVの解析を行ったところ,集簇した異種細胞群の相互作用が重要な役割を果たしているのは明らかであったが、全く別の機序が因子Xの過剰発現に関与している可能性が示唆された。この機序として,集簇骨髄由来細胞の同種集団感知機構によって因子Xの発現が調整され、L-CNV発生を制御している可能性が示唆され,発展的なのための予備的解析を行う。 3.加齢黄斑変性患者と健常者より得られた検体のSNP解析:同意が得られた加齢黄斑変性患者と健常者より提供された血液検体から得られたゲノム情報をもとに,候補因子Xのプロモーター領域に存在するアリルについて引き続き疾患感受性の解析を進める。
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Causes of Carryover |
1.現在までの研究成果の公開のための費用:現在,投稿準備中の論文掲載費用と査読者から要求された追加実験で使用するマウスの維持と購入費用および使用する試薬費用にあてる。 2.今回の研究成果をもとにした発展的研究の予備的実験:因子Xによる加齢黄斑変性の発生機序として,骨髄由来細胞をはじめとする集簇細胞の異種細胞間シグナルネットワークが大きく関与していることが明らかになったが,同時に,因子Xによって集簇した骨髄由来単球系細胞の同種集団感知機構が関与していることが示唆されたため,in vitroで細胞密度依存的な培養骨髄由来単球系細胞の上清シリーズを網羅的に解析し,因子Xによる集団形成後の細胞密度の閾値を越えた際にだけ,有意に変化する分子を探索する。その結果を,時系列でのレーザー誘発脈絡膜新生血管モデルマウスの網膜脈絡膜伸展標本で検証し,in vivoでの確認を行う。
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