2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K15739
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
赤間 智也 関西医科大学, 医学部, 准教授 (10548788)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞外マトリックス / グリコサミノグリカン / ケラタン硫酸 / 角膜 / グリコシターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
ケラタン硫酸グリコサミノグリカン(KS-GAG)の角膜実質細胞外マトリックス構築に与える影響を調べる目的で、KS-GAGの糖鎖伸長酵素であるβ3GnT7の遺伝子を成体マウスの角膜において発現を停止させその影響を角膜厚の変化、コラーゲン線維の走行の変化として解析することを計画している。その予備実験として薬物により遺伝子発現抑制を可能とする遺伝子改変マウス(B3gnt7flox/-/Rosa26CreERT2/pA-lacZ)を作成し、薬物(タモキシフェン)による遺伝子発現変化をリポーター遺伝子(lacZ)の発現として確認することを試みた。その結果、lacZの発現をX-Gal染色にて確認することには成功したが、lacZ活性を蛍光試薬の活性化という形で確認することはできなかった。現在市場に出ている蛍光試薬について複数検討を行い、最も感度の良いものを使用する必要がある。また酵素的にKS-GAGを分解し、その時の角膜細胞外マトリックスの構造変化を解析することの計画しており、そのためのKS-GAG分解酵素の精製を現在進めている。これまでに二種類の酵素(エンドβガラクトシターゼとケラタナーゼII)のクローニングおよび大腸菌による大量発現の系を確立し、実験に使用するための酵素を確保した。これらの酵素の反応条件について現在最適化を進めており、今のところどちらも生体内で充分酵素活性を有する酵素であると考えられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスを用いたKS-GAGの機能解析において、現在解析に必要な量のマウスの作成を進めている。同時に薬物による遺伝子発現抑制の確認をマーカー遺伝子(lacZ)で調べており、予想通りlacZが発現することを確認した。このlacZの発現した細胞においてKS-GAG産生酵素の発現抑制が生じていることになるため、蛍光顕微鏡などの解析系にてその特定が必要である。当初の予定ではlacZ活性により蛍光を発する合成試薬(GlowYellow β-Gal)を用いて細胞の特定を進めるはずであったが、予備実験では二光子顕微鏡による検出ができなかった。角膜上皮細胞では強く蛍光が観察されていたので検出系の問題ではなく、おそらくlacZ活性に対して合成試薬の反応感度が低いためであると思われる。 一方、酵素的に角膜KS-GAGを分解する研究のために現在までに二種類の酵素(エンドβガラクトシターゼとケラタナーゼII)をクローニングし大量精製を行った。この二種類の酵素は分子量も酵素特異性も異なるタンパク質であるが、共に成熟型KS-GAGを分解することができる。研究計画では酵素を生体の角膜に投与して角膜KS-GAGを分解しその時の角膜実質構造の変化を調べるので、これらの酵素のうちで生体の角膜KS-GAGを効率的に分解するものを使用する必要がある。そこでこの二種類の酵素の酵素学的特性を調べ、活性の高い条件での投与を検討している。これまでの解析で、二種類の酵素は共にpH5.0からpH8.0までの条件で酵素活性を示し、また塩濃度の影響は受けないことがわかった。ケラタナーゼIIは50℃の温度で最も活性が高かったが安定性が低く、37℃では安定性も高く酵素活性も70%以上を有していたことからマウスに投与しても充分に活性が見られることが予想された。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子改変マウスを用いたKS-GAGの機能解析については、上述したように蛍光試薬でのlacZ活性の確認が必要である。購入可能な試薬としてSPiDER-βGalがあるのでこれを使用してlacZ活性を確認できるか調べる計画である。もしこの蛍光試薬でも活性が確認されない場合は他の蛍光試薬の検討を行うが、現在のところ上記二つの試薬しか知られていないので、lacZの活性を蛍光として観察することはできないかも知れない。その場合はX-Gal染色を行って可視光での顕微鏡観察を行うか、電子顕微鏡にてX-Gal染色の沈着物を検出する方法をとる予定である。 酵素的に角膜KS-GAGを分解する研究では大量精製した二種類の酵素を摘出したマウス眼球に塗布してKS-GAGの分解を調べ、効率的に分解する酵素を選ぶ。またこの時、ex vivoにおけるKS-GAG分解と角膜実質細胞外マトリックス構築に変化が生じるかどうかを電子顕微鏡などで確認する。次に酵素をヒアルロン酸などと混ぜることでゲル化し、麻酔を行ったマウスに投与して眼球KS-GAGの分解とその際の角膜実質細胞外マトリックスの変化を電子顕微鏡にて調べる。
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