2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔顔面機能にかかわる脳内回路を解明し、その重要性をコネクトーム研究に反映させる
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16K15775
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 篤 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (90201855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 章子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10585342)
加藤 隆史 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50367520)
橘 吉寿 神戸大学, 医学研究科, 講師 (50373197)
佐藤 文彦 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60632130)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 筋感覚 / 神経回路 / 脳 / 三叉神経 / コネクトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
咬合感覚が自律神経機能に直接影響を与えることに働いている脳内神経回路の解明し、世界中で推進されているコネクトーム研究に口腔顔面機能の重要性を反映させることが本研究の目的である。 ラットを用いたこれまでの研究で、口腔顔面の感覚のうち、咬合感覚以外の感覚は三叉神経節ニューロン--三叉神経感覚核--視床後内側腹側核中央部(coreVPM)の経路で視床に伝達されるが、咬合感覚だけは別の経路、つまり三叉神経中脳路核ニューロン--三叉神経上核--視床後内側腹側核尾腹内側辺縁部(VPMcvm)の経路で視床まで伝達されることが明らかになった。そこで、咬合感覚の、VPMcvmから大脳皮質への投射の様態を明らかにするため、咬合感覚入力を持つことで同定したVPMcvmに両方向(順行+逆行)性神経トレーサーであるWGA-HRPを微量注入した後、全大脳皮質内に分布する標識軸索終末の分布を調べた。その結果、密な標識終末は、これまでの通説から予期していた体性感覚野には存在せず、自律機能に関わる島皮質の中の顆粒性島皮質の吻尾的中央の小部位(vrs2GI)のみに存在することを示すデータが得られつつある。vrs2GIが咬合感覚が入力する部位であることは電気生理学的に確認されている。データは、咬合感覚はそれ以外の口腔顔面感覚とは異なる視床--大脳皮質路によって伝達されることを示している。さらに、vrs2GIへの逆行性トレーサーであるFGの微量注入によって、vrs2GIは、VPMcvmのみではなく、視床味覚部位(VPPC)からの入力も受ける可能性が示されつつある。本研究で明らかになったVPMcvmが、Parkinson syndromeやTourette syndrome患者の脳内深部刺激治療の対象部である可能性とVPMcvm-vrs2GI路がそれらの治療効果に関連する可能性を、現在考察中である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で解明をめざしている視床--大脳皮質経路の起始部位(視床後内側腹側核尾腹内側辺縁部、VPMcvm)も終止部位(顆粒性島皮質の吻尾的中央の小部位、vrs2GI)も、実験前の予想とは違って小領域であることが、結果が得られ始めてわかった。よって、大きな注入では、VPMcvmまたはvrs2GIの外にまで拡散し、咬合感覚以外の感覚が伝達される経路を含んでしまう可能性が高いので、これら小さなVPMcvmまたはvrs2GIに限局した神経トレーサーの注入が必要になった。しかしそれは容易ではなく、その解決に時間を要している所である。具体的には、(1)注入の対象であるVPMcvmまたはvrs2GI自体を注入中により厳密に同定することが容易ではなかった。その解決のため、電気生理学的手法を用い、咬筋神経の電気刺激による誘発電位を記録して注入部位を決定することにした。また、(2)これらの各注入部位がVPMcvmまたはvrs2GIに充分に限局していることを注入後に、より厳密に確認することが容易ではなかった。その解決のため、標準切片を作成してその観察からやり直し、VPMcvmとvrs2GIの細胞構築学的同定法を確立した。さらに、(3)WGA-HRPのVPMcvmへの注入では、三叉神経上核に限局して逆行性標識細胞が認められた注入例のみをVPMcvmに限局した注入と判断し、この例における順行性標識された軸索終末の分布のみをデータとした。以上の対策を踏まえつつ、限局された注入が得られるように、多くのラットに注入を試みている所である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況欄に記載したように、解明をめざしている視床--大脳皮質経路の起始部位(VPMcvm)と終止部位(vrs2GI)に限局した注入例を増やし、より限局した注入に一日でも早く成功するように努めたい。29年度は、より細心の注意を払って、多くの動物に注入する予定を立てている。また、得られた注入部位の厳格な評価が本研究結果の高い信頼度につながるので、妥協せずに評価を行う予定である。 一日でも早く実験を完遂させ、データの分析を開始し、図を作成して、論文を完成しなければならない。それを国際的学術誌に投稿して受理された後、ラットコネクトームデータを取りまとめているドイツのRostock大学の解剖学講座のNeuroscience groupに研究成果を送付する予定である。我々のデータの受領状況によっては、相手側研究者の代表であるSchmitt教授との相談が必要になろう。
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Causes of Carryover |
28年度末報告書の研究業績欄の記載の如く、我々が明らかにしたい視床―大脳皮質間の投射の概要は28年度初期の実験で明らかになった。しかし、その実験結果の信憑性が不充分であるので、より精度を上げる必要があることが28年度初期中にわかった。その為には、より精度の高いトレーサー注入法をより多くの動物に施す実験を多数行う必要があることが、28年度初期中にわかった。よって29年度には、動物は勿論、実験器具、薬品をより多く購入する必要が生じた。さらに、本実験に従事してもらっている特任研究員の雇用時間を考慮しなければならなくなった。 さらに、得られる研究成果を、世界中(ラット脳はドイツの研究者が中心になっている)で展開されているコネクトーム研究に反映させるために、国際学会での発表をより積極的に行う必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に使用するお金の使途は、研究助成金の申請当初と基本的には大きくは変わっていない。しかし、上述の様に、実験回数を,当初の計画よりも大幅に増やす必要が出てきたので、動物、器具、薬品などの購入量を増やす予定である。また実験を遂行してくれる研究者の一人である特任研究員の雇用時間を増やすつもりである。以上の理由によって、計画当初よりもより多額の支出を行う予定である。
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[Journal Article] Orofacial proprioceptive thalamus of the rat2017
Author(s)
Yoshida Atsushi、Fujio Takashi、Sato Fumihiko、Ali Md Sams Sazzad、Haque Tahsinul、Ohara Haruka、Moritani Masayuki、Kato Takafumi、Dostrovsky Jonathan O.、Tachibana Yoshihisa
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Journal Title
Brain Structure and Function
Volume: 222
Pages: 2655~2669
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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