2016 Fiscal Year Research-status Report
新規ゲノム編集クローニング技術を活用した軟骨細胞転写ネットワークシステムの解明
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16K15779
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西村 理行 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (60294112)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 軟骨細胞 / 転写因子 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨・軟骨形成誘導因子BMP2は、Sox9、Runx2、Osterixなどの骨あるいは軟骨形成に必須な転写因子の発現および機能を制御して、その生物学的効果を発揮している。そこで本研究計画では、軟骨細胞分化の初期段階、すなわち軟骨細胞への系譜の決定に関わる転写因子の同定を目指した。方法としては、ゲノム編集技術の応用法である遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降(enChIP)法を活用して、BMP2により制御されるearly-response 転写因子のクローニングを実施した。BMP2により初期に発現誘導される遺伝子に対して、enChIP法を実施して、BMP2標的遺伝子のプロモーター領域に結合する転写因子群を同定した。これら転写因子の中の一つに着目して、機能解析を行った結果、この転写因子が軟骨細胞分化のマーカー遺伝子プロモーター上に結合し、その遺伝子発現を促進させていることが見出された。さらにこの転写因子のノックダウンを行うと、BMP2による軟骨細胞分化が阻害された。したがって、この転写因子がBMP2誘導性軟骨分化機能に重要な役割を果たしていると考えられた。次に、この転写因子の発現を検討したところ、mRNAレベルでは恒常的に発現しているが、タンパク質レベルで、BMP2添加により発現が増加するという興味深いデータを得た。そこで、in vivoでの発現を検証するために、whole mount in situ hybridizationにて解析を行った結果、この転写因子が軟骨形成期にある肢芽に特異的に発現していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に、1)遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降(enChIP)法を用いて、軟骨分化の初期過程に関与する転写因子の同定を行えたこと、2)当該転写因子の発現動態と機能解析を実施し有意義なデータを得たこと、を総合的に判断して概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.当該転写因子の機能解析をさらに推し進める。特に、細胞生物学的解析、エピゲノム解析、プロモーター解析、およびゲノム編集法を用いた実験系を駆使して、軟骨細胞分化に対する分子作用メカニズムの解明を展開する。 2.in vitroおよびin vivoでの当該転写因子発現の制御機構の解析を進める。 3.当該転写因子のin vivoでの解析の基盤構築 当該転写因子のin vivoにおける機能を解析するためには、当該転写因子のノックアウトマウスの作製とその表現型の解析が必要不可欠である。Cas9ゲノム編集法を用いた遺伝子改変マウスの作製に必要なツールの作製を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度に予定していたMicroarray解析のサンプルの調整に必要な基礎データを再確認する必要性があったので、Microarray解析とそれに必要な最終サンプルの調整を行わなかった。それらの物品費用および解析費用の相当分が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度にMicroarray解析を実施して、当該費用を使用する。
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