2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔がんの定位照射:細胞周期動態からみた有効性の解明と至適照射条件の確立
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16K15784
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三浦 雅彦 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10272600)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 定位照射 / 細胞周期動態 / 口腔がん |
Outline of Annual Research Achievements |
SAS細胞は、ヒト舌扁平上皮癌由来の細胞株で、p53に変異を有するものの、p21WAF1を誘導することができる。レンチウイルスを用いてFucciを導入したこの細胞株では、細胞周期の進行によりFucciの正常な蛍光推移が観測された。さらに10Gy照射すると、ほとんどG1アレストは観察されず、顕著なG2アレストが観察された。スフェロイドを形成させると、HeLa-Fucci細胞とは異なり、照射しない状態でも外層が緑色優位、内部はほとんどが赤色を呈することがわかった。そこで10Gy照射すると、外層の緑色細胞の割合が24時間後をピークにその後減少し、一方、内部の赤色細胞は、ほとんど変化しなかった。このことは、外層の増殖期細胞がG2アレストを示し、24時間後をピークにリリースされ、内部の細胞は、G0期に留まることを示していると考えられた。FACSによるソーティングを実施して、外層と内部の細胞を分離して放射線感受性を調べた所、照射直後に細胞を調整した場合、意外なことに増殖期にある外層の細胞が単層培養細胞より抵抗性になり、内部の細胞は抵抗性を示さなかった。ところが、照射24時間後に細胞を調整して調べると、今度は内部の細胞のみが抵抗性にシフトし、増殖期細胞と同等の抵抗性を示すことがわかった。皮下移植腫瘍の解析では、10Gy照射後、壊死部周辺の細胞が赤色を、それ以外の部位では緑色を示し、その状態が3日以上持続することが判明した。p53遺伝子に変異を有するHSC3とHSC4細胞にもFucciを導入し、単層培養で10Gy照射すると、前者は著しいG2アレストの遷延を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Fucciを導入した3種類の口腔扁平上皮癌細胞株を樹立した。その10Gy照射後の細胞周期動態の解析について、単層培養系ではすべて終了し、明確なG2アレストが起こることを確認している。SAS-Fucci細胞については、スフェロイド、皮下固形腫瘍の系でも解析を行い、HeLa-Fucci細胞同様、やはり遷延したG2アレストが認められた。このように、実験系の樹立と10Gy照射後のG2アレスト口腔癌細胞株で明確に確認できたことから、初年度の計画はほぼ順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Fucciを導入したHSC3とHSC4細胞についても、SAS-Fucci細胞同様に実験を進め、腫瘍微小環境下、特に皮下固形腫瘍モデルにおける1回10GyによるG2アレストの動態を検討する。リアルタイムに蛍光を検出する系についても検討を加える。
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Causes of Carryover |
ヌードマウスの後ろ足に移植した腫瘍に対し、局所的に照射できるX線発生装置が故障したため、in vivoでの実験が中断せざるをえなかった。そのため、この実験に計上した分の費用を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に新しいX線発生装置が本学の共同研究施設に導入されることになっており、使用が可能になり次第、実験を再開する。
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Research Products
(9 results)