2016 Fiscal Year Research-status Report
ジルコニアおよびチタン表面への軟組織接着機構の解明
Project/Area Number |
16K15798
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
塙 隆夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (90142736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 祐介 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (60447498)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イットリア安定化ジルコニア / チタン / 軟組織接着 / 表面反応 / 表面分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
イットリア安定化ジルコニア(YSZ)は化学的に安定であり、生体内不活性セラミックスに分類されており、そのため、骨形成促進のための表面処理法の試みが続けられている。一方、最近では歯科インプラントとして使用した際に、軟組織とある程度接着するという報告が散見されるようになってきた。本研究では、その機構を明らかにする一助として、YSZの水中およびハンクス液中での変化をX線光電子分光(XPS)によって解析し、表面反応を明らかにした。 3種類の結晶面(100)、(110)、(111)の13mol%Yを含有する市販YSZの板材を試料とした。結晶面はX線回折(XRD)によって確認した。試料は純水中に60 d浸漬あるいはグルコースを含まないハンクス液に7 d浸漬し、純水で濯ぎ窒素ガスで乾燥した後、XPSで解析した。鏡面に研磨し洗浄したCP Ti 板に対して同様の実験を行い、YSZの結果と比較した。 純水およびハンクス液浸漬と浸漬前の試料からZr、Y、Oと汚染層に由来するCが検出された。ZrとYは酸化状態であった。OはO2-、OH-、H2Oの状態で存在していた。Yの相体濃度は(100)と(111)において公称組成よりも小さく(110)で同じであった。水中に60 d浸漬した(110)試料には大量の水酸基が存在していた。一方、リン酸イオンとしてのPはハンクス液浸漬のすべての試料から検出され、特に(110)試料で多く検出された。これらの結果から、結晶面に依存して表面反応速が異なるが、実際に歯科および医療に使用されるYSZ表面はランダムな多結晶面であり、反応は上記の総合的結果として現れる。純水中における水酸基の増加とハンクス液中におけるリン酸基の増加が確認され、これらの現象がYSZへの組織接着を促進している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水及びハンクス液に対するイットリア安定化ジルコニアの反応性を明らかにすることができた。また、各結晶面に対する反応性も明らかにできた。無機イオン、水分子との反応を結晶面ごとに明らかにできたことで目標は達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
鏡面研磨し、洗浄、乾燥したYSZ およびCP Ti 表面での、アルブミン、γ-グロブリン、フィブリノーゲンの吸着特性を明らかにする。 結合上皮細胞を培養し、増殖を調べる。また、インテグリンの蛍光観察から細胞接着性を明らかにする。線維芽細胞を同様に培養し、細胞増殖、細胞接着性を評価する。上述の培養細胞中の細胞接着に係る遺伝子発現を評価し、細胞接着に係る因子を考察する。 上述の細胞培養後に、細胞を機械的に剥離し、剥離後のYSZ およびCP Ti 表面をXPS で解析する。これにより、細胞培養中の表面組成、化学的状態の変化を明らかにする。 以上から、YSZ およびCP Ti の結果の相違を検討し、細胞培養中におけるジルコニア表面の組成変化、化学的状態の変化を明らかにする。また、細胞接着に係る遺伝子発現を明らかにする。
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Causes of Carryover |
焼結イットリア安定化ジルコニアの見積りに時間を要し年度内の購入が難しくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに焼結イットリア安定化ジルコニアの購入先のめどがついたので、早めに購入する。
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