2016 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア機能障害の観点からみた慢性筋痛の病態解析
Project/Area Number |
16K15801
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
前川 賢治 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (20304313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 充昭 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60613156)
水口 一 岡山大学, 大学病院, 講師 (30325097)
窪木 拓男 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00225195)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 慢性筋痛 / ビタミンD / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は,慢性筋痛の発症メカニズムを明らかにすることを目的とした上で,①高脂血症治療薬であるスタチン服用による副作用として,骨格筋の痛みが濃度依存的に生じること,②スタチン服用によりミトコンドリア内でのATP産生に不可欠であるコエンザイムQ10の産生が妨げられ,組織代謝異常が生じることに着目し,慢性筋痛とミトコンドリア機能障害の関係を紐解く計画を立案した.しかしながら,最近になってスタチン服用者の中でも,血中のビタミンDが欠乏した個体でスタチン服用による筋痛の発症が有意に高いことが明らかとされた疫学研究が幾つか報告された.また,ビタミンD欠乏状態では,骨格筋の疼痛感受性が高まることが動物実験で明らかとされたことから,慢性筋痛の病態解明,特に疾患感受性を検討するにあたっては,ミトコンドリア機能を評価するよりもビタミンD欠乏との関連を評価する方がより直接的ではないかと考え,研究を開始した.まず,筋組織内のビタミンDの受容体の発現状態を評価した.実際には慢性筋痛の生じやすい僧帽筋,咬筋に加え,四肢の筋における筋組織内のビタミンD受容体の発現状態をマウスを対象として遺伝子レベルで確認した.その結果,四肢の筋に比較して,僧帽筋,咬筋では有意に受容体発現が増加していることが明らかとなり,その遺伝子発現はビタミンD欠乏食を与えることでアップレギュレートされることも突きとめた.すなわち,骨格筋の中でも慢性筋痛が生じやすい筋群ではビタミンDの需要が高いことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,慢性筋痛の生じやすい僧帽筋や咬筋においてビタミンDの需要が高いことを明らかとした.また,筋痛とビタミンD欠乏の関係をより直接的に評価するため,ラットの咬筋組織内に侵害受容を加えた際の中枢変化をビタミンD欠乏状態とコントロール条件下で比較する実験を進めており,筋痛発症メカニズム解明のための新知見は順調に得られていると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度から実施しているビタミンD欠乏状態の動物モデルの筋組織に侵害受容を付加した際の,中枢に生じる特異的な変化を解明すべく実験を進める.また,ビタミンD欠乏状態の動物モデルにおける筋組織の疼痛反射を評価することで,実際に筋組織内で疼痛感受性が亢進するのかを明らかにするとともに,筋組織内局所における変化が生じているかを免疫組織学的手法で評価する予定である.
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Causes of Carryover |
申請研究の計画内容を変更したことにより,各年度における研究進行に必要な費用にも変化が生じ,2年計画の本研究において,後半に実施する計画研究により費用が必要となったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に実施を計画している動物実験に必要な動物,分子生物学的実験に必要な消耗品や組織学実験に必要な抗体,試薬等を中心として使用を計画する.また,蓄積された研究成果を国内外で発表するための旅費としても使用を計画している.
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